
第八章 プロへ挑め 一話
理亜たちが練習試合を終え、パーティーがひと段落し終えた時、紅茶を飲みながら談笑してた理亜たち。
「えっ! 皆もそんな被害に遭ってたの?」
「はい。私たち全員、通り魔の様な輩に、足や腕を刺され、切断を余儀なくされたんです」
理亜が、他のメンバーがどう言う理由で義足や義手を付けたのか気になり、聞いてみると、高貴が胸の内を吐露する。
理亜は一驚すると、深い悲しみに苛まれる。
高貴たちも陰鬱な表情で俯く。
「そ、それにしてもおかしな話ですよね。バスケット選手ばかり狙った通り魔だなんて」
「ああ。俺たちは立ち直ってっけど、これからまた被害者が現れるかもと思うと腹が立つぜ」
加奈が暗い話題から少し話を変えると、奏根が天井を見上げながらむしゃくしゃしていた。
「捕まるといいね。犯人」
「まあ何にしてもだ。私たちはこうやって笑っている。いつか本当の意味で報われる日は来るさ。それよりクリプバの一回戦を勝たないとな」
智古が思いふける様にそう言うと、豪真が皆を励まそうと前向きな助言をする。
「そうだった。一回戦は一か月後だっけ? ならもっと練習しないと」
理亜がはっ、と思い出したかのようにそう言うと、居てもたっても居られず、スポーツバックからバスケットボールを取り出し、手でボールハンドリングをする。
人差し指の上で回したり、手の甲から手の平にボールを移動させたりと、様々なハンドリングをする。
「理亜さん。本当にバスケットがお好きなんですね。正にバスケットが嗜好の塊なんですね」
高貴がボールをさばく理亜を見て、微笑ましい様な表情で見つめる。
「千川理亜。去年のインターハイ優勝校のエースだ。そんな選手になるにはバスケが恋人ぐらいでいないとな」
「ふん。あんな身体しといて、宝の持ち腐れってか」
豪真も高貴同様に理亜を微笑ましく見つめながら語ると、けっ、見たいないけ好かない感じでそう口にする奏根。
「失礼だよ奏根ちゃん。理亜ちゃんは身体だけでなく性格や顔もいいんだから」
「そ、それ、理亜ちゃんに何のフォローにもなってないんじゃ?」
智古が妹を叱る見たいなお姉さん口調だったが、加奈がおどおどしながら、それはどうでしょう? 見たいな感じで口にする。
「えへへへ。身体だけでなく、顔や性格も良いだなんて」
都合の良い所だけなのか分からないが、先程の会話を耳にしていた理亜はデレデレしながらプロ顔負けのボールハンドリングをする。
全員は一斉にズッコケた。
「す、凄いですわね。あんなにも卓越されたボールハンドリングをしながら私たちの話まで聞いていたなんて」
若干感心しながら、額から流れ出る汗をハンカチで拭く高貴。
「いやいやそこじゃないだろ感心するとこ。高貴、お前も中々の天然だよな」
奏根がツッコむが、高貴はキョトンとした表情で何を言っているのか分かっていない様子だった。
奏根は呆れて俯きながら溜息しか出てこなかった。
【@nifty光】

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