
第九章 実力差 三話
「やるねあの子たち」
「うん。こっちも本腰入れないと」
平下選手が少し度肝を抜かれたのか、理亜たちを称賛すると、三浦選手が引き締まった様子で理亜たちの認識を改める。
「まずは一本返そう」
平下選手が、エンドラインから安間選手にボールをパスすると、安間選手がゆっくりドリブルしながら、腹から声を出す。
安間選手のメンバーたちも、「「おー!」」と気合の入った声で応える。
加奈はセンターサークルで待ち構える。
安間選手は加奈に近付くと、チェンジオブペースでゆっくりと右斜めに向かいドリブルする。
釣られるように、加奈も安間選手のペースに合わせたが、チェンジオブペースなため、急速なスピードで左にドリブルしようとするが、それはフェイクですぐに右から加奈を抜く安間選手。
加奈はすぐに安間選手の背後からボールを奪おうと、手を伸ばす。
だが、安間選手はビハインドパスで、平下選手にパスを出す。
平下選手はそれを片手で受け取ると、すぐにドリブルをして理亜を抜こうとする。
理亜は腰を落とし、両手を広げ、平下選手の動きに合わせて、移動する。
平下選手はフロントチェンジでドリブルしているとチェンジオブペースを仕掛け、ゆっくりとレッグスルーでボールを左手で取ると、左から抜くと見せかけ、右側に素早くロールターンする。
理亜はフェイクに一瞬、躊躇してしまい、右側からのロールターンに後少しでと言う所で対応できなかった。
しかし、理亜は素早いスピードで、もう少しで追いつけると言う所で、平下選手はラテラルパスで田中選手にパスを出す。
右斜めのシュートコーナーでパスを受け取った田中選手に智古はプレッシャーをかけるため、張り付くようなディフェンスをする。
しかし、田中選手はボールを肩幅にまで持ち上げ、ジャンプした。
智古はシュートしてくると思い、智古も跳躍する。
ブロックしようとした智古だが、田中選手は左手で智古の両手を前に出させず、フックシュートでシュートする。
そのボールは見事入り、四対三となった。
チームメンバーとハイタッチしながら戻る田中選手。
高貴が負けてたまるか、見たいな意気込みで、エンドラインから加奈にパスを出す。
加奈は「ゆっくり、一本」と覇気のある声で、メンバーを鼓舞する。
1クウォータは十分、まだ六分残っている。
加奈が、安間選手とセンターラインでぶつかる時、加奈はチェンジオブペースで右や左にボールをドリブルすると、不意に、レイバックで左から安間選手を抜こうとする。
なんとあっさり抜けた。
意外な事に驚くところだが、試合に集中していた加奈は、そんな事は気にも留めていなかった。
しかし、ドリブルしていた加奈が違和感を感じ始める。
手にしていたボールが突然、消えたのだ。


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