
第九章 実力差 四話
何事かと思い、後ろを振り返った加奈。
なんと、安間選手が理亜たちのゴールに向かい、ボールを手にしながらドリブルをしていた。
簡単に抜かれた理由は、わざと抜かれ、後ろからボールを奪うと言う狙いが、安間選手にはあった。
理亜と奏根がすぐに追いつき、ダブルチームで迎え撃つが、安間選手は巧みなボールさばきで、ダブルバックチェンジ、そしてロールターンで奏根サイドから抜く。
すぐにヘルプに回った智古と加奈。
また、ダブルチームで迎え撃つが、高速のフロトチェンジで翻弄され、最後は左にいる智古からバックチェンジで抜く。
加奈と違い、キレやスピードが一段落上の様なテクニック。
そのままドリブルしていった安間選手はレイアップでシュートを決める。
「うわー、上手いよ」
智古はたまらず、脱帽したかのように口にする。
残り時間は四分を切った。
点数は六対三で理亜たちが負けている。
「すいません。ボールを取られて」
「気にすんな。立ち向かう意気込みが常に大事なんだからな」
加奈が申し訳なさそうに言うと、奏根がフォローする。
他のメンバーも、加奈の肩を優しく叩き、笑顔を向けると、加奈は気持ちが切り替えられ、試合に集中できた。
「あの子たち、良いチームワークだね」
それをベンチで見ていた、キャプテンの岡本選手が、微笑ましい様な様子で見守っていた。
すぐに加奈にボールが渡ると、加奈はドリブルで抜くのではなく、パスに意識を向けていた。
センターラインで待ち構える安間選手。
理亜たちは、加奈が、必ずボールを渡してくれると信じていて、敵チームのコート場で待機していた。
上手く、相手のディフェンスを避けるため、左右に動いたりと、スタミナを消費していた。
そこで、加奈が、片手にボールをしっかりと手に取ると、またもや、野球選手が投げる様なフォームで、ボールを力強く投げる。
投げた先は安間選手。
安間選手は誤って自分にパスを渡したのか? と思い、立ったままボールを受け取ろうとする。
しかし、加奈が投げたボールは、グルリと回転し、奏根が居る、左側のウイングコートに向かっていった。
安間選手だけでなく、他のメンバーも、目をギョッとさせ、驚愕していた。


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