
第十章 強者から 一話
理亜たちは、コートの中央に集まり、ジャンプボールから始まる。
高貴は必死に飛ぶが、パレイ選手が一枚上手で、先にボールを弾かれる。
そのボールは平下選手が手に取る。
しかし、理亜が平下選手が手に取った瞬間、ボールを下から上に弾き飛ばす。
すぐにリバウンドで取った理亜。
平下選手がボールを奪い返そうとするが、理亜はしっかりと両手で握り、そうはさせなかった。
理亜はそのまま、左にフェイクを入れ、素早くフロントチェンジで右に持ち替え平下選手を右から抜いた。
まだ、全員がばらけていた時に起こった事なので、理亜の前方には誰も居なかった。
ディフェンスに力を入れたいと言っていた豪真だったが、理亜は自分で点を取りたいと言う意欲が湧いていたのだ。
ヘルプで、三浦選手と田中選手がダブルチームで理亜を防ごうとする。
しかし、理亜はロールターンからレッグスルー、そしてダックインで三浦選手と田中選手の間を抜けた。
そして、パレイ選手がノーチャージセミサークルで待ち構える。
すぐにマッチアップする理亜とパレイ選手。
理亜は大胆にも、ノーフェイクで右から抜こうとした。
パレイ選手は、すぐに右に移動するが、理亜は素早いバックチェンジで左手に持ち替え、左から抜いた。
だが、抜いてもコンマ一秒で立て直してきたパレイ選手。
理亜はレイアップシュートをするため高く飛ぶと、パレイ選手も高く飛ぶ。
シュートのコースを完全に塞がれたかと思いきや、理亜はダブルクラッチから正確に狙いを定めるために、フィンガーロールを混ぜ合わせた。
ボールは回転しながら、リングの周りをコロコロと回り、最後はすぽっと、ネットの中に入った。
「よし! ナイスだ理亜!」
「へっへー」
豪真は嬉しさのあまりガッツポースを取ると、理亜に向け親指を立てる。
理亜も満面の笑みで、豪真に親指を立てる。
チームメイトとハイタッチをしながら戻っていく理亜だったが、奏根だけが、アッカンベーとしてきた。
理亜は「もう、奏根ちゃんたらー!」とプンプン怒る。
これで点数は九対七。
一点差までに迫った。
「それにしても、理亜ちゃん凄いね。さすがインターハイ優勝校のエース」
「いやあ。それほどでも~」
智古がスターでも見るかのように目をキラキラさせると、理亜はドヤ顔でニンマリする。
「ようやくエンジンかかってきたか。ふしだら女はギアチェンの回路が鈍いのが万国共通ってか」
「もう、奏根ちゃんのそう言う所だよ」
奏根がけろりとした態度でそう言うと、理亜は噛みつく勢いで怒る。
「皆さん、来ます!」
そこで、高貴が声を出すと、理亜たちは再び試合に集中する。


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