
第十章 強者から 二話
安間選手がゆっくりドリブルしてくると、加奈は出方を伺う。
安間選手はロッカーモーションやシャムゴットで加奈を揺さぶる。
加奈は思わず奪いに行きたいと言う衝動を抑える。
そこで、安間選手が左から加奈を抜こうとし、加奈も左にステップしようとするが、何か壁の様な物を感じた。
なんと、田中選手が加奈にスクリーンをかけてきた。
それを目にしていた智古は、マッチアップを安間選手に切り替える。
智古もゾーンディフェンスを意識していたので、安間選手の所に向かう。
加奈も後ろから追うと、安間選手が後ろも見ずに、ノールックパスで田中選手にパスを出す。
両手でしっかりと受け取った田中選手は、スリーポイントラインからシュートを打つ。
回転しながら綺麗な三日月を描くようなシュート。
パレイ選手と高貴が互いにスクリーンアウトをかける。
高貴は俊敏な動きで、なんと、優位なポジションを確保できた。
シュートされたボウルはリングの輪に弾かれた。
「リバウンド!」
豪真が大声でそう言うと、その気持ちに応えるかの様に、高貴が飛ぶ。
しかし、いくら優位に立っていたとしても、なんと、ジャンプしていたパレイ選手は高貴の後ろからボールを掴み取り、そのままダンクした。
「きゃつ!」
背後から突き飛ばされた高貴。
「おいおい、今のプッシングだろ!」
奏根が審判の内田さんに、抗議するが、内田さんは「いえ、不撓選手とパレイ選手は同時にぶつかってました」と言われ、奏根は仕方なく黙り、大きな溜息を吐く。
「ごめんね。大丈夫?」
「はい、こちらこそすいません」
パレイ選手は優しく高貴に手を差し伸べると、高貴も謝罪しながらその手を握る。
十一対七となり、理亜たちが不利な状況。
そこで、理亜は加奈に近付き、少し耳打ちする。
「ねえ加奈ちゃん。私にボール回してくれない?」
「ええ。分かりました」
理亜がそう頼むと、加奈はキリっとした面持ちで答える。


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