
第一章 夢と現実を見る少女 四話
外観は普通なのだが、竜宮城に見えるわけもなく、大言壮語なペテン師医師。見たいなイメージを持っても不思議じゃないが、理亜と郁美は寛大なため、医師の病院のコンセプトなど、梅雨と残らず消え去っていた。
それはそれで酷いのでは? と、思う人たちもいると思いますが、どうかスルーして下さい。(作者より)
「あれ? 開かないわね」
郁美がドアの取っ手を引っ張っても押しても一向に変化のない扉。
「仕方ないわね。――ペッペッ!」
冷静に仕方ない、と口にするが次の瞬間。郁美は気合を入れて自分の両手に唾を付け強く擦る。
「まさか……強硬手段でぶち破る気⁉ ちょっとお母さん! その横にインターホンあるから、せめてそれ押してからぶち破ってよ!」
いやいやそうじゃないでしょ。
誰もが突っ込む場面だが、二人は冗談抜きでぶち破ることは前提条件のようだ。
「仕方ないか」
妙にしょげていた郁美。
そんなにぶち破りたかったんですか? 見たいな空気を醸し出しながらインターホンを鳴らす郁美。
インターホンを鳴らして五秒後、ゆっくりとドアが開いていく。
ゆっくり開いていくと思いや、突如勢いよく開く扉。
急な事に驚いた理亜と郁美。
「誰だ⁉」
さらに驚くことに、ぼさぼさの髪の白衣を着た若い男性が、銃を両手で握り、銃口を、交互に理亜と郁美に向ける。
「ひっ!」
驚き恐怖した理亜は、その場で車椅子に座りながら両手を上げる。
しかし、何故か郁美はむすっとした表情で黙って立っていた。
「何しに来た?」
男は鋭い目つきで再び質問をする。
「うわわわっ。本物の銃だ」
理亜はあたふたしていたが、郁美は訝しい目で首をかしげる。
「そんなモデルガンで、一体、何をしたいの?」
「えっ! モデルガン⁉」
郁美は淡々と言って、その言葉に理亜は一驚する。
「ふん、残念だったな。この銃は、元はモデルガンだが、私が改造した、改造銃だ。弾も本物だ」
どうだみたか。見たいに自信満々にそう宣う男。
「あらそう。なら警察に連絡しないと。たしか警察の電話番号は……」
郁美は、平然とした態度で、スマートフォンを取り出し、指先を動かす。
「まてまて! 冗談だ!」
男は慌てふためきながら両手を郁美に伸ばし、手を広げ、ぶるぶると震わせる。
郁美は目を細めながら動かす指を止め、黙ってスマートフォンをポケットにしまう。
「まったく。これくらいの冗談が通じないとは。さぞかし幼少期は人の言う事をほいほい聞く、愚(ぐ)直(ちょく)な人間だったんだろうな」
男は白衣の襟を手で正し、冷や汗をかきながらそう言う。
「あのう。私たち、義足の件で予約してた千川理亜と言うんですけど」
男の顔色を窺うようにして、理亜がそう聞く。
「何だそう言う事か」
男は呆れて溜息を吐き捨てながら、だらだらした態度でそう言う。
「ちょっと理亜。ここは止(や)めてお金を貯めてから、ちゃんとした医師の人に治療してもらった方がいいんじゃない?」
郁美は理亜の耳元でひそひそと話す。
「話だけでも聞いとこうよ。それからでも遅くないんじゃない?」
理亜と郁美がひそひそと話している間に、男は周囲を捜索するように警戒しながら、意味もなく誰もいない歩道に向かい銃口を向けるポーズを取りながら、固唾を飲み込んでいた。
「……何か望み薄かも」
どっと疲れが出たみたいに、大きな溜息を吐きながら、理亜は眉(まゆ)唾(つば)の話に用心した。

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