
第十章 強者から 六話
背番号は四番。
「いよいよ主役のお出ましか。加奈、頼むぞ」
「はい」
奏根が加奈の元により、そう言うと、鋭い眼差しになる加奈。
岡本選手はポイントガードなため、マッチアップするのは加奈なのだ。
一度、深呼吸をして気持ちをリラックスさせる加奈。
そして、ジャンプボールが始まる。
高貴は必死に飛ぶが、やはりジャンプボールはパレイ選手が弾いた。
弾いた先は岡本選手。
加奈はすぐに岡本選手の前でディフェンスを取る。
岡本選手は左にフェイントを入れると、シャムゴットし、今度は右にフェイントを入れると、すぐさま、フロントチェンジで左に持ち替え、高速ドリブルで左から加奈を抜いた。
すぐに後を追う加奈。
フリースローサークルにまで岡本選手が近付いてくると、理亜と智古、高貴が岡本選手にゾーンディフェンスをかける。
三人の壁に立ち向かう岡本選手。
そこで、岡本選手は急に止まりだした。
それでもディフェンスを崩さない、理亜たち。
だが、岡本選手はチェンジオブペースで理亜たちを翻弄するが、加奈が背後からボールを奪いにかかる。
それを察知していた岡本選手が、ロッカーモーションをした。
前にいる理亜たちは少し前のめりになり、加奈は、急に迫りくるボールに戸惑い、心臓がビクンと跳ねるのを感じる。
まるで後ろに目があるようなタイミングで、智古の居る左サイドから、トップスピードで抜く。
岡本選手は前と後ろにいるディフェンスを巧みな計算と技量で抜いたのだ。
すぐに後を追う理亜たち。
なんとか、理亜と高貴が間に合い、再び岡本選手にディフェンスをかける。
バックチェンジで右手に持ち替えようとした岡本選手だったが、岡本選手はエルボーパスで、左にいる田中選手にパスを出そうとした。
「四十二番にパス行くよ!」
それを後ろから追いかけていた智古が目にすると、エルボーパスのパスコースを防いでもらおうと、大声で理亜と高貴に指示を出す。
左サイドからのパスを防ぐため、智古の声で岡本選手がエルボーパスをしてくると察した理亜は片手を広げ左斜め前に出てパスコースを防ごうとした。
しかし、岡本選手は更に、左肘でボールをどつく。
ダブルエルボーパスと言ったところか、しかもそれをノールックパスでこなした。
そのパスの相手は平下選手。
平下選手はボールを手に取ると、フリースローラインからシュートを打つ。
高貴が必死になってボールを追いかけジャンプして防ごうとしたが間に合わず、そのシュートは決まった。
これで点数は、四十八対五十四。


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