
第十章 強者から 十話
智古はすぐにチェストパスで理亜にパスを出す。
パスを受け取った理亜は相手のゴール下に目掛けドリブルする。
平下選手が理亜の前に立ちふさがると、理亜はロールターンで左から抜こうとするが、平下選手は機敏に動き、左側をディフェンスする。
理亜はすぐにフロントチェンジで右にボールを持ち替えると、持ち前のスピードで平下選手を抜いた。
「理亜さん!」
相手のゴール下目前と言う所で、高貴がスクリーンを必死になってパレイ選手にかけていた。
パレイ選手は、上手く動けず、理亜のディフェンスに回れなかった。
理亜は好機と見なし、ゴールした手前でシュートを打とうとする。
だが、平下選手が理亜がシュートモーションに入る時には、理亜の前にまで迫っていた。
ほぼ同時に飛ぶ理亜と平下選手。
シュートコースを完全に塞がれ打つ手なしかと思ったが、理亜は機転を利かせ、フリースローのシュートモーションから、右手にボールを持ち替え、アンダーハンドレイアップで決めようと、下から上に放り投げるようにシュートを打った。
ボールはブロックされる事なく、綺麗にスポっと決まる。
「うし!」
豪真はガッツポーズをする。
これで点数は五十三対五十四。
一点差まで追いついた。
「戻るな! 当たれ!」
奏根は声を上げ、理亜たちに指示を出す。
残り時間は二分十一秒。
時間が残り少ないうえ、相手が一点リードしているため、ゆっくりディフェンスをする余裕が無いのだ。
だから奏根はキャプテンとして、理亜たちに指示を出す。
平下選手がエンドラインから岡本選手にパスを出そうとする時には、加奈が既にディフェンスに当たっていた。
手をブンブン広げ、パスを妨害する加奈。
だが、平下選手も岡本選手たちと同様、ベテランなため、危なげながらも岡本選手にパスを出す。
パスを受け取った岡本選手は、すぐにドリブルで理亜たちのコートに走る。
もう、ポジションでマッチアップする意味もなく、岡本選手に、奏根と理亜がダブルチームでディフェンスをする。


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