
第十章 強者から 十一話
岡本選手は制限時間が迫っていても動揺せず、冷静だった。
岡本選手はロールターンで右にいる理亜から抜こうとするかと思いきや、バックチェンジで左に持ち替え、奏根から抜いた。
岡本選手は智古が迫ってきているのを知ると、ラテラルパスで右にいる三浦選手にパスを出す。
三浦選手が受け取ると、すぐにシュートモーションに入る。
理亜が三浦選手の前にまで走りディフェンスに間に合った。
理亜は必死な形相で、三浦選手の前に立ちはだかった。
その頃には、三浦選手はジャンプしていたため、理亜も負けじと、跳躍する。
体が後退する事なく、フェイダウェイシュートの危険性もなかった、
絶対にブロックしてやろう、と言う強い意気込みで手を広げ伸ばす理亜。
三浦選手はシュートがブロックされる危険を察知したのか、近くにいた田中選手にビハインドパスでパスを出す。
右から受け取った田中選手はフリースローラインからシュートモーションに入るかと思いきや、リングだけ見ながらリターンで三浦選手にパスを出した。
その時には奏根が、田中選手の前にまで迫っていた。
しかも、パスを受け取った三浦選手はまだ跳躍中だった。
おまけにジャンプの最高到達点にも達してない状態でシュートを打つ。
理亜もまさかジャンプ中にパスを出したうえすぐに受け取り、そのままシュートを打たれるとは思わなかった。
そして、そのシュートは綺麗に決まる。
「まじかよ」
奏根は常識外れの三浦選手のシュートに脱帽気味だった。
点数は五十三対五十六。
残り時間は一分五秒。
「こうなったらスリーポイント狙って延長戦に入るしか。……でも」
智古はぼやくように言うと高貴を見る。
高貴は肩から大きく息をし、限界に達していた。
「はあー。はあー」
荒い呼吸で膝に両手を付け俯く高貴。
チームメイトはそんな高貴を見て、高貴が第三クォーターの終わった後の休憩時間に言った言葉を思い出した。
その言葉を思い出した理亜たちは、覚悟を決めオフェンスに入る。
高貴は奥歯を噛みしめ、気合を入れて相手チームのゴール下にまで走る。
高貴はすぐにパレイ選手のディフェンスにあう。
高貴はスクリーンから抜け出しながら、ボールを貰うポジションを確保するため、身体を張る。
加奈が急いでドリブルしていく。
加奈はドリブルで抜くのではなく、早いパス回しで、ボールを運ぼうとした。
しかし、その戦術はアンテロープスの選手たちには分かっていたため、なんと、加奈に対し、岡本選手と田中選手、平下選手がトリプルディフェンスで防ごうとしていた。


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