クリーチャープレイバスケットボール 十章 強者から 十二話

第十章 強者から 十二話

 パスを出したくても、三人は完全にパスコースを塞ぎ、そうはさせなかった。

 加奈は焦り、どうしたらいいのか分からなくなり思考が止まる。

 「加奈ちゃん!」

 そこで、理亜がパスを貰いに加奈の所にまで走る。

 加奈はそれに気づき、シザースパスで理亜にボールを手渡した。

 理亜が右からドリブルしてショートコーナーに向かう。

 その横を平下選手と、田中選手が追う。

 スリーポイントを狙わなければ同点にすらならないのに、この時の理亜の行動に、アンテロープスの選手たちは戸惑う。

 そこでまさかの人物が理亜を横切り、スリーポイントラインにまで走る。

 その人物は高貴だった。

 高貴はリング下からまさかのスリーポイントラインにまで走っていたのだ。

 だがそうなれば確実にリバウンドはパレイ選手が取る。

 パレイ選手はリバウンドを取るか、それとも高貴のディフェンスに回るか困惑していた。

 残り時間は五秒。

 理亜はノールックパスで後ろに居る高貴にパスを出した。

 「いけ! 高貴!」

 豪真も熱がこもったエールを送る。

 パスを受け取った高貴は迷うことなくスリーポイントシュートを打つ。

 ブロックする相手はいない。

 完全なフリーだった。

 ボールが宙に浮きながら試合終了のブザーが鳴る。

 これで入れば同点になる。

 果たして結果は……。

 リングに迫ったボール。

 選手たちや外野の豪真たちも固唾を飲み、冷や汗をかきながら見守る事しか出来なかった。

 ガン!

 その結果、ボールはリングに当たり、ネットをくぐる事はなかった。

 「……」

 理亜たちは肩から息をしながら、呆然と立ちつくしていた。

 「ピーー! 試合終了!」

 「やったー!」

 「わあー!」

 アンテロープスの選手たちは喝采でも上げるかのように喜びを分かち合っていた。

 高貴は外したことでショックを隠し切れず、その場で膝をコートに付ける。

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