
第十一章 謀略・仲間・友情 一話
時は少し戻り、銅羅は自分のオフィスで葉巻を吹かしていた。
「どうします銅羅様?」
「どうもこうもないよ。そもそもあの女が何を考えているのか分からない。あの様な粗末な依頼をツエルブに依頼し続ける魂胆が見えないと言うのが現状だよ」
秘書の男が悩みながら銅羅に聞くと、銅羅は眉を顰める。
「ツエルブは特定のターゲットを見つけては足や腕を再起不能にまで刺したり、クリプバを抜け出した選手を殺しています。おまけにクリプバの会員が、クリプバの秘密を露呈させた者なども、執行対象です。その依頼も全て、あの女が依頼している事。何か嫌な胸騒ぎがしますが」
秘書の男は落ち着かない様子で喋る。
銅羅はテーブルの上に置かれている灰皿で葉巻の火を消す。
「嫌な胸騒ぎか……どちらにしても私はあの女の存在自体が容認できない。早くあの計画を遂行した方が賢明なのかもしれないな」
銅羅は立ち上がると、ガラス張りでできている壁にまでゆっくりと歩き、景色を眺めながら喋る。
「その方がよろしいかと、ツエルブも異常な猛犬です。あの男も始末した方がよいのでは?」
「それも考慮してくとするよ。どちらにしても奴を抹殺しなければね」
二人はまるで先を見渡しているかの様に喋り続ける。
すると、一本の電話が銅羅のスマートフォンにかかってくる。
「もしもし、やあ君か。どうやら今回の仕事も上手くいったみたいだな」
「ああ。ターゲットは始末した。約束まで後二週間だぞ」
「もちろん分かっているさ。ただその前に、君には大きな仕事を任せたいと思っている。スフィア」
銅羅は涼やかに言いながら、声に殺意を匂わせる男に要件を頼む。
「……何だ?」
男は警戒しながら口にする。
「依頼の内容は直接会って話そう。構わないかい?」
「……分かった」
銅羅の要請に少し間を置き、暗い声で口にする男。
男は、先程まで、札幌の港湾から豪華客船でクルージングする中年の女社長を手にかけてきたばかりだった。
その女は、海外でも名の知れた王手企業の佐久間グランドゴルフと言う会社の社長を務めていた。
しかし、関係のないスポーツ選手にドーピング検査に引っかからないように根回しをしたり、挙句の果て、そのドーピングを使用させた選手に莫大な大金をかけ、裏でギャンブルをしていた。
それが、網羅聖に取っては目障りだったのだ。
莫大な金が動けば株価も変動する。
網羅聖は株を買収し、管轄もしてるので、その女社長が目の上のたん瘤だったのだ。
そこで、スフィアを派遣し、女社長の胸を持ち前のナイフで突き刺した。
係員になりすまし、自然に通路で通り過ぎようとした時に刺したのだ。


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