クリーチャープレイバスケットボール 第十一章 謀略・仲間・友情 三話

第十一章 謀略・仲間・友情 三話

 次の日、クリプバ開催まで後、半月を切った日は、豪真の指導もヒートアップしていた。

 「理亜! 持ちすぎるな! お前には仲間がいるんだぞ!」

 「はい!」

 とある高校生との練習試合の時、理亜はコンディションが良くなく、ミスを連発していた。

 しかも、豪真がパスを出せと言って、勢いよく返事をしながら、何故かベンチにいる豪真にパスを出す。

 「――⁉」

 それを目の当たりにしたメンバー全員が驚愕する。

 豪真はと言うと、パスを受け取ると、「ん! んっ⁉」見たいな声を上げ、困惑していた。

 その表情はあまりにも素っ頓狂なものだった。

 理亜は、「あっ!」と盛大なパスミスを犯した事に驚くと、「えへへへ、ミスっちゃった」とテヘッと照れ笑いしていた。

 「何をしとんのじゃお前は!」

 そこで、今までミスを連発していた怒りも溜まっていたのか、奏根がどこからかハリセンを取り出し、理亜の頭頂部を叩く。

 「いて! ごめんなさーい!」

 理亜は小さい子供が半べそにでもなったかの様に謝罪する。

 「えーと。そっちボールからでもいいですよ」

 そこで、本来はコート外にパスを出した理亜たちはディフェンスから試合を始めなければいけないのだったが、相手チームのキャプテンが、苦笑いしながら、理亜たちサイドからのスタート、で良いと申し出る。

 一同は申し訳なさそうにしながら試合を再開した。

 練習試合も終わり、理亜たちは八十六対五十二で負けた。

 この結果に理亜は不甲斐ない気持ちになり、消沈してしまう。

 「ねえ理亜ちゃん。何か悩み事があるなら聞くよ?」

 「いや、その、えーと」

 ベンチで帰り支度をしている智古が憂慮しながらそう聞くと、理亜はバツが悪そうに答える。

 「どうしたんだ理亜。今日はらしくないぞ。智古の言うように何かあるなら言ってみろ」

 豪真も親身になりそう聞くが、理亜は「でも」と申し訳なさそうに言う。

 「ああ! たく! いい加減にしろお前! 俺らはチームだぞ! お前の悩みは俺らも抱えてるって言っても過言じゃねえのに、何でそれに気づけないんだ!」

 そこで奏根が、ウキー! 見たいにヒステリック見たいな態度で我慢の限界を迎えると、理亜に近付き説教する。

 「奏根ちゃん。皆」

 理亜は奏根の言葉に感銘を受け、奏根の(うっ)(ぷん)が溜まったような顔と奏根以外のメンバーの暖かいを顔を見ながら安堵した声で呟く。

 「……実はね」

 そこで、理亜が意を決して、昨日の郁美の態度や貧困について語る。

 話を聞いた一同は、思った以上に深刻な話に暗い面持ちになってしまう。

 「そうだったんですね」

 高貴が切ない声でそう言う。

 「ねえ理亜ちゃん。私たちに出来る事なら何でもするから。何だったら私が同人誌や小説で稼いだ印税で、工面してあげるよ」

 「いやいや! そんな事頼めるわけないよ。それにあまり酷くなったら、母さんが生活保護に入って、母子加算されるって言ってたから、まだ手はあるから」

 加奈が心配な表情で優しく声をかけたが、理亜は申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、大丈夫、と口にする。

 「うー。大分心に来るな」

 奏根は少し顔を逸らし、胸を押さえながら、顔向けできない様な、微妙な表情をしていた。

 自分が富裕層である事を自覚している分、貧困家庭である理亜に後ろめたい気持ちを感じ始めたからだ。

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