
第十二章 波乱か? 六話
そしてその頃、豪真と奏根は、くじ引きする会場に足を運んでいた。
その場所は、フロントの左の扉から入り、代わり映えしない内装の中を歩いて行くと、これまたフロントと遜色のない広いホールに着く。
そこには、クリプバの参加者のキャプテンと監督が既にいた。
選手は全員、色の違うジャージを着ていた。
ちなみに、理亜たちはジャージの中にユニフォームを着ている。
奏根は生唾を飲み、重苦しい空気に眉を顰める。
豪真は堂々としながら列に並ぶ。
すぐ奏根の横にいるとあるメンバーの高身長で髪は黒髪のショート、凛とした顔立ち、胸もそこそこ大きい女キャプテンが「うわっ、断崖絶壁だ」と奏根の胸を見て冷笑する。
「んだとてめこらっ! 喧嘩売っとんのか⁉」
奏根はぶち切れ、その女キャプテンにつっかかる。
「よせ奏根。そう言う鬱憤はバスケで晴らせ。それにその手の人種は人を見下したり中傷の言葉を浴びせる事ぐらいしか出来ない木偶人形とでも思ってればいい。それ以外、個性がないんだろ」
豪真は軽く息を吐き捨て奏根を宥めると、ゴミでも見るかのような目でその性格のねじれ切ったキャプテンに小言を口にする。
「なにおっさん。喧嘩売ってんの?」
その女キャプテンはキリっとした目でキレていたのか、言葉に敵意が込められていた。
「私は事実を言っただけだ。社会の恥さらしには敬意を払えないどころか憐憫な心境すら抱けない。君は一度、人として見つめなおした方が良い」
「てめえ!」
「よせ佐久弥。ここでは実力だけが物を言う世界だ。相手の言動など気にせず、バスケだけで結果を出せばいい」
豪真の冷たい言葉に、頭に血が上ったかの様にキレた咲久弥と言う女選手をせき止める相手の監督の男。
高級そうなグレーのスーツを着て、威張りくさった態度を常に取ったかの様な、印象が悪い顔立ち。
「やれやれ、親は子に似ると言うが、お前の様な粗品の心に比肩する選手を生み出しおって。迷惑極まりない」
豪真は不快感を露わにすると、その監督は鼻で笑う。
「私はゼルチャートンソンチームの監督、桂田智彦と言う。貴方の言うその迷惑と言うのには誤りがある。秩序に莫大な影響を与えさえしなければ大抵の事は慣れるものだ。したがってその程度の態度に憤りを感じるなど、狭量と言うもの。それこそ品性が欠けると言うものだ。あっはっはっは!」
恰幅の良い体をのけぞる様にしながら高笑いする智彦。


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