
第十二章 波乱か? 七話
豪真は遺憾に思い、鋭い目つきを智彦に向ける。
奏根も腹立たしく思い、智彦と咲久弥を睥睨する。
佐久弥は鼻で笑い、奏根を無視して前を見る。
智彦も似た態度を取る。
豪真は溜息しか出てこず、奏根に軽く頷き「もうやめよう」と言い、二人は前を向いた。
ジャージを着た女キャプテンと白衣を着た豪真を除いた高級なスーツを着た監督たち。
そこで豪真は少し離れて横列に並ぶ銅羅を見つけた。
豪真の視線に気付いた銅羅は頬に笑みを浮かばせながら、軽く頭を下げる。
豪真は険しい視線だけを銅羅に向けると、前を向いた。
「では会場にお集まりの皆さん。これよりトーナメント戦で行うクリーチャープレイバスケットボールのくじ引きを始めたいと思います」
ビシッと決めた黒いタキシードを着た好青年の若い男がマイクを片手にそう言うと、選手や監督たちは歓談を止め前を向いた。
歓談をしていたとしても、素顔はさらけ出さない。
「では名前を呼ばれたチームのキャプテンはこちらの箱にある紙を一枚お取りください。そこに番号が書かれており、こちらのモニターで映し出されているその番号を当てはめていき、対戦チームを決めたいと思います」
若い男は慣れた口調でそう言うと、若い男の背後で、上から下にかけてスクリーンが下りてくると、そこに映し出されたのはトーナメント表だった。
トーナメント表には既に一から八の番号が振り分けられていて、箱の中の紙に書かれている番号をトーナメント表の番号に当てはめていき、対戦相手を決めると言う仕組みだ。
至って普通のトーナメント戦だが、この時の奏根は、クリプバの試合だと思うと、普通のトーナメント戦とは逸失な物を感じていた。
「それでは始めて行きます。まずは前大会の優勝チーム、アサルトハイドチームの代表者。どうぞ」
若い男がそう言うと、型まで伸びた白髪で赤い瞳をした女が前に無言で歩き出す。
その気品ある歩き方や顔立ちは、何か別種な物を感じさせた。
白髪の女は温厚そうで気品ある顔立ちのまま、なんの動揺もなく黒い箱の中のくじを、スッと引く。
「……七番です」
白髪の女は瞼一つ動かさず淡々と読み上げた。
その声も上品でとてもではないが、一般人とはかけ離れたスペックがある様に思わされる。
モニターの七番の記号がアサルトハイドと変更した。
「では次のチームです。……」
若い男が次のチーム名を口にする頃には、音や気配もなく元いた場所にいつの間にか居た白髪の女。
奏根はその様子をずっと監視していたがいつ戻ったのか分からず驚いた様子になる。
そして、次々と埋まっていく番号。


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