
第十二章 波乱か? 八話
「では残りの一番枠と二番枠は、シャルトエキゾチックとゼルチャートンソンチームとなります」
その言葉を聞いた奏根はギョッとした表情で、咲久弥を見る。
咲久弥は奏根に対し、親指で首をなぞり、最後にはいけ好かない顔で親指を下に向ける。
奏根はぶち切れそうになるのを堪えながら、中指を咲久弥に向け立てる。
豪真はそのやり取りを見て呆れながら深い溜息を吐く。
智彦は既に勝利を確信したみたいに不敵な笑みになる。
奏根の心臓の鼓動が激しくなる。
ここまで胸の内に未知な感情が芽生え、それがとてつもなく忌避したいようなうっとうしさが、奏根の心の内でまとわりつく。
「それでは第一回戦を今夜の二十一時、同時試合で進行したいと思います。選手並び監督の方たちは控室で連絡があるまでお待ち下さい」
若い男が好青年の様な明るい表情でそう言うと、選手と監督たちは控室に向かう。
その間、咲久弥が「あいつらの選手、皆あいつみたいに断崖絶壁じゃないの? フフフフッ」と嫌味を言うと、智彦が「せめてバスケぐらい取り柄があればいいが、あの品性の欠片もないキャプテンだと、それも望み薄だな」と微笑しながら悪態をつく。
奏根は怒りを堪え豪真と共に、理亜たちの控室に戻る事にした。
そして、控室に豪真たちが着き、扉を開けると、理亜たちはVIゴーグルでゲームを楽しんでいた。
キャッキャウフフと盛り上がっている様子。
「隊長! 右から敵襲であります!」
「全部隊、一斉にあの敵を叩くぞ! 私に続け!」
「「了解!」」
理亜が隊員の一人見たいに敵軍のゾンビたちの襲来を隊長役である智古に報告すると、智古はリーダーシップを発揮し、覇気のある声音で、隊員たちである理亜たちを鼓舞する。
すると、理亜と加奈と高貴はまるで精鋭部隊が覚悟を決めたような意気込みで声を上げると、智古を先頭にしてゾンビたちの群れに突っ込む。
ドカーン!
「ああーー! ちょっと誰⁉ こんなとこに地雷を置いたの⁉」
「私であります!」
「うわー! 背後から仲間に撃たれました!」
「それも私であります!」
「きゃっ! この武器、火力が全然出ません!」
「それは先程、アップグレードもしなかったレベル一のアサルトライフルを、そのまま高貴隊員に渡したからであります」
どうやら、理亜は色々な所でポカをやらかし、智古たちに多大な損害をもたらしていた。
理亜はそれでも、誰よりも一番楽しみ、隊員になりきっていた。


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