クリーチャープレイバスケットボール 第一章 夢と現実を見る少女 八話

第一章 夢と現実を見る少女 八話

 「じゃあ始めるぞ」

 「よろしくお願いします」

 豪真が理亜の靴と靴下を脱がし、足のズボンをめくる。

 まず左足を図り、理亜の右足に合う義足を選ぶと、医療器具に手を伸ばし、麻酔を取る。

 右足にチクッとした痛みが走るが理亜は気にしていなかった。

 そこからはスムーズに進み、特に痛みもなく、理亜の右足に義足が取り付けられた。

 終わった時の時刻は、夜の十八時三十分を過ぎていた。

 「よし終わったぞ。上体を起こせるか?」

 「うん」

 豪真の和らいだ言葉に二つ返事で言葉を返す理亜。

 理亜は上体を起こし、取り付けられた義足を凝視する。

 「……これが、私の義足」

 「ああ、そうだ」

 理亜が目をキラキラさせて見る義足は、ソケットや懸垂装置が一切取り付けられていない、人間の足、そのものだった。

 皮膚まで人間と何ら変わらない色。

 「凄い。指先にまで感覚がある」

 「神経、骨、血管、細胞、筋肉、皮膚を繋ぎ合わせている。普通の人間の足と変わらない。言っておくが、一週間は絶対安静だ。無意味に動かすなよ」

 「うん!」

 感激している理亜に説明する豪真。

 理亜は何の不満もなく元気よく頷く。

 「これから帰るんだろ? なら私が家まで送ってやろう」

 「ありがとう。豪真さん」

 豪真がそう聞くと、感謝の気持ちを込めてそう口にする理亜。

 そして、再び豪真が理亜に断りを入れると、理亜を持ち上げ、車椅子に座らせる。

 オペ室を出たら、すぐ近くで郁美が不安そうに待っていた。

 「――! 理亜! 足!」

 「うん。上手くいったよ」

 郁美が信じられない物でも見るかのように、素肌が晒されている理亜の義足に驚きを隠しきれなかった。

 理亜は満面の笑みで親指を立てる。

 「娘さんにも言っておいたが、一週間は絶対安静だ。不用意な外出も避け、必要以上に動かさないように。お風呂などは入って構わない」

 豪真が慣れた口調でそう言うと、郁美は何度も頭を下げ「ありがとうございます! ありがとうございます!」と感謝の言葉を口にする。

 「帰りは送ってくれるんだって。お母さん帰ろ」

 「ええ。そうね。明人も待ってることだし」

 理亜と郁美は笑みを浮かべながら言葉を交わす。

 豪真はそんな二人を見て微笑ましくなる。

 そして、豪真の車で理亜の自宅に帰る事になった。

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