
第十四章 ラフプレーの嵐 二話
奏根だけでなく、理亜たち全員が同じ気持ちだった。
「お集まりの皆様方。長らくお待たせしました。これより、クリーチャープレイバスケットボールを開催いたします」
「「ワアーーー!」」
アナウンスから聞こえるくじ引きの時の若いお兄さんの声で試合開幕の一声がかかると、会場にいた観客たちは、地震でも起こすんじゃないか? てぐらいの勢いで喝采する。
「ピー―! それでは選手一同の皆様方、コートの前に!」
腹の底から声を出し、コートの中央でそう言うのは、審判役の中年の男。
小太りで髭を生やし、顎が割れている印象。
「お前ら、あいつらに本当のバスケと言うやつを分からせて来い!」
「「おーー!」」
先程からゼルチャートンソンチームのメンバーの言動にイラついていた豪真は、気合の入った声で理亜たちを鼓舞すると、理亜たちは握り拳を作り、天井に掲げながら豪真の呼びかけに応える。
「良いかお前ら。いつも通りだ。奴らに二度とボールを持たせない恐怖を味合わせてこい。フフフフ」
「まっ、私たちは楽しくやらせてもらいますけどね」
智彦が不敵な笑みで穏やかではない事を言うと、ゼルチャートンソンチームのメンバーは鼻で笑う。
ゼルチャートンソンチームの女子メンバーたちは、ジャージを脱ぎ、中に着ていた黒いユニフォーム姿になる。
そのまま理亜たち選手一同は、ペナルトギアをオンにし、コートの中央に集まる。
歩きながら、黒い模様が身体をむしばむ様に彩り、その跡は消えていく。
「それではこれより、シャルトエキゾチック対、ゼルチャートンソンチームの試合を始めます!」
「「よろしくお願いします!」」
審判の中年の男が慣れた口調で高らかとそう言うと、理亜たちは敬意を込め覇気のある声で深々と頭を下げる。
しかし、ゼルチャートンソンチームのメンバーたちは頭を下げない所か、無言で理亜たちを蔑む。
その眼からはバスケとしての闘志などなく、ただの愉悦に浸るかのような、全く別の悪意が込められていた。
奏根は、こんな奴らに頭を下げたのか、と思うとそれだけで腸が煮えくりかえそうな強い憤りを感じていた。


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