
第十四章 ラフプレーの嵐 四話
そして、審判の男がボールを高く投げると、試合開始のブザーが会場中に鳴る。
「「わああーーー!」」
観客たちも待ち焦がれてた見たいに、どっとした歓喜に満ち溢れる。
先にジャンプボールを弾いたのは高貴だった。
弾かれたボールは智古の手に渡る。
智古はすぐにドリブルで相手コートに特攻しようとした。
だが、相手もクリプバの参加者なだけあって、そう簡単に切り崩せないディフェンスをする。
バックチェンジで左手に持ち替えた智古は、目線と身体を樽子に向けたまま、加奈にパスを出す。
パスを難なく受け取った加奈は一度仕切り直すため「じっくり、一本!」と言ってメンバー全員を安堵させる。
その言葉に力強く頷く理亜たち。
だが、ゼルチャートンソンチ―ムのメンバーたちは、何故か不敵な笑みになる。
加奈がバックチェンジからロールターンで加津地を抜くと、センター付近に居る高貴に向け、片手でレーザーパスをする。
とてつもないスピードで高貴にパスがいくかと思いきや、そのボールは左にグルリと曲がり、奏根の手に渡った。
その曲がるパスを予想できなかったゼルチャートンソンチームのメンバーたちは、一驚するぐらいしか出来ず、奏根はフリーのままスリーポイントシュートを打つ。
綺麗なアーチを描き、観客たちの視線をくぎ付けにしたボールは見事決まった。
「よしよし!」
豪真は両手を叩きながら称賛する。
奏根と加奈はハイタッチし自分たちのコートに戻る。
観客たちの歓声もますますヒートアップしていた。
「何でブロックしなかったんだろう?」
自分のコートに戻りながらぼやく様に何かに疑問に持つ加奈。
そう、ペナルトギアをオンにしていると言う事は、跳躍力も常軌を逸しているもののはずだった。
すぐに奏根の元にまで近付き、最高到達点のボールをブロックできる可能性は十分にあった。
にもかかわらず、ゼルチャートンソンチームのメンバーたちは、奏根のシュートをブロックする素振りすら無かった。
「気にしない方が良いよ加奈ちゃん。多分、身体が重くて、奏根ちゃんのシュートした最高到達点まで飛べなかっただけだよ」
智古が加奈の元に寄り、不安を和らげる。
「はい」
加奈は気持ちを切り替えたみたいな表情で力強く頷く。
そして、三対0から再び試合は始まる。
加津地がドリブルしながらゆっくりとセンターラインに近付いてくる。
その表情はバスケを楽しんでいると言うよりも、何か別の趣旨があるようにも思えた。
加奈は腰を落とし、両腕を広げディフェンスに励む。
すると、加津地はチェンジオブペースからフロントチェンジで右手にボールを持ち替えると、右から加奈を抜こうとドリブルしてきた。


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