
第十四章 ラフプレーの嵐 七話
「早くしろ! いつまで痛がってんだよ!」
そこで、ゼルチャートンソンチームのセンター、八鹿がふてくされた顔で加奈に野次を飛ばす。
理亜たちは不快感を露わにした表情で八鹿を睨みつける。
「加奈ちゃん。本当に大丈夫?」
「はい、お騒がせしてすみません」
智古が心配しながら声をかけると、加奈は真剣な表情で頷く。
「試合を再開します。ゼルチャートンソンチ―ムのボールから始めます」
そのまま試合が再開し、理亜たちは納得がいかないままプレーする。
豪真はベンチに戻っていて、不安が拭い切れない心境で理亜たちを憂慮する。
加津地が反省の色もなく、ずかずかと土足で足を踏み込むみたいにして、理亜たちのコートにドリブルしてくる。
警戒心を高めた理亜たちは不安と怒りを心の底から抱えながら待ち構える。
加奈はまた殴られるのかと思い、いつもの様な徹底したディフェンスが出来ない状態だった。
そんな加奈を見て冷笑する加津地は、なんのフェイントも入れず、強引に左から加奈を抜く。
加奈は抜かれるのだけはまずいと思い、身体で張って止めようと、左前に出る。
しかし、加津地は「邪魔だ! どけ!」と加奈に怒号を飛ばすと、右手で加奈の頬を手の甲で平手打ちする。
「加奈ちゃん!」
それを目にした理亜は驚愕し、一瞬ためらうかの様なそぶりを取ると、気持ちが切り替えられないまま、加津地を止めようと、走る。
しかし、理亜のマッチアップをしていた喜多が、なんと、人目を憚らず、右足で理亜の右腹部を思いっきり蹴り上げた。
「うっ!」
「ふしだら女!」
理亜が痛みに堪えきれず呻き声を上げその場で転倒すると、奏根が必死な形相になる。
加津地はフリースローラインから喜多にパスをし、スリーポイントラインから喜多がシュートを打つ。
そのシュートを止めようと、智古が逆サイドのスリーポイントラインからジャンプした。
既に一般人の身長を飛び越える跳躍力を見せた智古だったが、なんと、智古のマッチアップをしていた、樽子が空中に飛んでいる智古の両足首を両手で掴み、そのままギョッとした智古をコートの下に強く叩きつけた。
バン!
顔面から叩きつけられた智古。
観客の声すらもかき消すような鈍い音がコート場に響く。


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