
第十五章 あってないような対価の横行 三話
豪真は奇跡が起きるための材料を収集出来るのか? と思い、胸の内に希望を持たせ力強く頷く。
「肉を切らせて骨を断つ。これがヒントさ」
「えっ! どういう意味です?」
淡々という由紀子の謎めいた言葉に、豪真は狼狽えながら聞き返す。
「そこはあんたで考えな。今のでも大サービスなんだからね。じゃ、健闘を祈るよ」
不気味に微笑みながらそう言うと、後ろを向き、手を振りながらベンチコートを去る由紀子。
豪真は、深い溜息を吐き、思考を巡らせるが、これと言った答えが出てこなかった。
一方、試合は一方的な展開となり、第一クウォーターは三十七対九で理亜たちは負け越していた。
消耗していると言うより、身体のダメージが大きい見たいに、足を引きずりながら、ベンチに戻ってくる智古たち。
豪真は心配そうな表情で、すぐに応急処置できる道具一式を準備して迎え入れる。
「大丈夫か?」
「うん、今の所はね」
豪真が凍ったタオルを智古たちに手渡しながらそう聞くと、智古が辛そうな表情を隠しながら笑顔で答える。
豪真はすぐに、傷薬を傷を負ってる箇所に塗って、ガーゼで止め、テープで押さえる。
智古たちは、既に青い痣が出来ており、見てるだけで痛々しいのが伝わってくる。
だが、そんな中で、理亜だけが痣が出来ておらず、けろりとした面持ちをしていた。
「なんでふしだら女だけ痣が無いんだ?」
奏根が訝しい目で理亜を見る。
「私、ラフプレイには慣れてるんだ。よくインターハイでも審判の目を盗んで暴行してくる人たちに出くわしてたから、致命傷を負うのだけは回避できるよ」
理亜は少し憂鬱そうにそう答える。
「強豪プレイヤーに対しての妬みや嫉妬を向けられてきた理亜さんならではの逸話なのかもですね」
高貴が少しほっとした表情でそう言う。
一人でも致命傷を受けてない仲間がいる事への安堵だろう。


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