
第十八章 退く力 四話
「さっきある人からこう助言を貰った。奴らに勝つためには「肉を切らせて骨を断つ」と」
淡々とそう言う豪真の言葉にますます怪訝な面持ちになる理亜たち。
「いいか。奴らが物理で攻撃してきたら、さっき理亜や高貴が防いだみたいに、ボールを盾にしろ。護身術など備わっていないお前らが奴らの攻撃を防ぎ、勝つにはそれしかない」
豪真はそう熱く語る。
理亜たちは、互いの顔を見合わせ力強く頷く。
「分かった。でも、ボールを持っていない時に攻撃されたらどうすればいいの?」
智古が目に闘志の炎を宿しながらそう答えるが、一つだけ残る疑問を口にする。
「それはだな……」
豪真が観客席にいる声の中で淡々と説明する。
「えっ! 私たちに出来るんでしょうか? そもそもそこまで体力が持つかどうか……」
加奈が不安になる。
「確かにこの方法だとスタミナを消費するが、奴らの魔の手を逃れるにはそれしかない」
豪真が少し悔しそうにそう言うと、理亜たちは互いの顔を見合わせ意思を固めた。
「分かりました。やれるだけやってみます」
すると、高貴が揺るぎない意志でそう言うと、理亜たちも力強く頷く。
「よし! 行って来い」
「「はい!」」
豪真が優しく、熱血な面持ちで力強くそう送り出すと、理亜たちもその思いに答える。
「待っててね奏根ちゃん。絶対勝利を手にして見せるから」
理亜が優しく、ベンチの椅子でタオルを頭に被せ、俯いたままの奏根にそう声をかけると、奏根は黙って弱々しく頷く。
それでも反応してくれた奏根を見た理亜たちは安堵し、笑みを浮かべたままコートの中央に戻る。
そして、三十七対十七から試合が再開される。
加津地が敵意を込めた目で、加奈に向かいドリブルで向かってくる。
一方、理亜たちは……。
「な、なんだあれは⁉」
智彦がコートを見て驚愕していた。
「くそ! こいつら!」
樽子たちが苛立ちながら、なんと、ボールを貰ってもいない理亜たちはマークを外しに来てるのではなく、敵の物理的な攻撃を避けるため、縦横無尽にコートを走り続けていた。


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