クリーチャープレイバスケットボール 第一八章 退く力 五話

第一八章 退く力 五話

 どこかしこ構わず走り続けていて、ゼルチャートンソンチームのメンバーたちはそれを必死に追いかける。

 「頼む。もってくれ」

 豪真は祈りながら、理亜たちの安否を気に掛ける。

 すると、加奈が動揺している加津地に特攻し、ボールを奪いにかかる。

 加津地はロールターンで回避しようとするが、そのスピードやキレは加奈に見切られていた。

 ロールターンされる前に、加奈は加津地からボールを奪えた。

 それを確認した理亜たちは、一斉に敵陣のコートへと走り出す。

 その跡を追うゼルチャートンソンチームのメンバーたち。

 そこで、加津地が何とか加奈の前にまで走りきると、右ストレートの拳を加奈の左頬に振るおうとした。

 しかし、加奈はボールをしっかりと両手で握り、ボールを盾にした。

 ボールを殴った弾みで後ろにのけぞる加津地。

 加奈はフリーで、フリースローラインからシュートを打つ。

 見事決まり、これで点数は三十七対十九。

 「よし!」

 豪真は握り拳を作りながら声を上げる。

 すぐに加津地が速攻で理亜たちのコートに向かいドリブルしようとした。

 加奈は抜かせまいと、敵陣のフリースローラインでディフェンスを張る。

 先程ので、自分より加奈の方が実力が上な事を確信してしまった加津地は攻めあぐんでいた。

 「よこせ!」

 駒井が声を荒げそう加津地に言うと、加津地はためらいなく、左横にいる駒井にパスを出したが、そのボールを智古がスティールする。

 見事パスカットを決めた智古は敵陣のコートのリングの下にまでドリブルし、レイアップで決めた。

 点数は三十七対二十一。

 「何をやっている!」

 智彦が激怒し、ゼルチャートンソンチームのメンバーたちを叱責する。

 「ぼろが出てきたね」

 その様子を観客席から見ていた由紀子が、ニヤニヤしながらぼそりと呟く。

 「なあ監督。あれって?」

 その試合をようやく見ていた奏根が重い瞼を開きながら口にする。

 「ああ。相手は暴力頼みだった。最初は身体を張ったプレーをしていたが、それもシュートを打ってしまえば理亜たちがブロックする。しかも理亜たちを止めようにも、今は所かまわず走り出すものだから動きも読めない。そうなれば、向こうの攻撃事態を完全に防ぐ事が出来る」

 「でも、あんなに走ってたら後が持たないぞ。まだ第二クウォーターなんだぜ」

 豪真は腕を組みながらしかめっ面で淡々と言うが、それでも不安が色濃く残る奏根。

 「あいつらを信じるしかない。なんたってお前がキャプテンなんだからな」

 そこで、豪真は暖かい笑みで奏根に向かいそう言う。

 「今の俺にキャプテン何て資格はないよ」

 消沈しながらそう言う奏根。

 「そうか? お前の行動はあいつらだって理解しているし納得もしている。理亜たちから見れば、お前のさっきの行動は勲章ものだぞ。私もそうだからな」

 豪真はスッキリとした面持ちでそう言うと、奏根はどこか恥ずかしそうだった。

 そうこうしている内に、第二クウォーターは終わり、四十対三十一まで理亜たちは追い上げる事が出来た。

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