クリーチャープレイバスケットボール 第十九章 冷めぬ悪夢 二話

第十九章 冷めぬ悪夢 二話

 「くそっ!」

 ベンチに居る奏根と豪真は悔しさと怒りで思わずベンチから飛び出しそうになるのを必死に堪える。

 「高貴ちゃん! しっかりして!」

 「う、は、はい。大丈夫です」

 智古が今にでも泣き崩れそうな心配した面持ちで高貴にそう言うと、高貴は痛みに堪えながら、心配かけまいと、笑みを浮かべる。

 「ふん。あの貧乳不細工女が退場になって物足りなくなった分、その漬けはお前らに清算させてもらうからな」

 佐久弥が少し距離を取る前、敵意を込めながら、蔑む様に言う。

 理亜は憤怒の怒りを押し殺し、勝って、見返してやりたくなる思いに気持ちを切り替える。

 「加奈ちゃん! 私にパス出して! 皆はあの人たちから出来るだけ距離を取って!」

 「でも、そんな事したらオフェンスは理亜さん一人になってしまいます!」

 理亜が自身を奮い立たせるようにそう声を上げると、高貴が必死に呼び止める。

 「大丈夫。私の近くに仲間が居るだけで、力と勇気が湧いてくるんだ。それがある以上、あんな人たちに後れは取らないよ」

 理亜の純粋な眼差しに触発されたかの様に、呆けた表情になってしまう加奈たち。

 そこで、檀上の思いを込めた加奈たちは、互いの顔を見合わせながら力強く頷く。

 理亜の言葉は自惚れでも、自信過剰の狂言ではないことはいち早く理解していたし、何より、こんな窮地にいる中で、ここまで暖かく力強い心を目の当たりにしては、加奈たちも首を縦に振るしか選択肢はなかった。

 「分かりました。でも何かあったら、私たちはあの人たちの攻撃を避けるのに徹さず、理亜さんのオフェンスに加わります」

 「……みんな、うん!」

 加奈の揺るぎない言の葉に、理亜は暖かい風でも身体に受けているかの様な心境で、安心した面持ちで頷く。

 そして、加奈がボールをすぐに理亜に渡すと、佐久弥たちはオールコートで当たってきた。

 既に真面なディフェンスなどせず、ためらいなく、拳や蹴りを振るう加津地たち。

 加奈たちはコートを走り抜けながら、加津地たちの攻撃を避ける。

 理亜は智古たちを信じ、オフェンスに専念する。

 ボールを敵陣のコート内に向けドリブルしていく理亜。

 そこで、駒井と樽子が、智古たちに見切りをつけ、ボールを手にしている理亜に攻撃を仕掛けてきた。

理亜は、フロントチェンでボールを何度も持ち替えながら、相手の攻撃を躱す。

 隙をついて抜くと、すぐさま敵陣のコートに向けドリブルする。

 前には誰も居ない。

 またとないチャンス。

ココナラ

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