クリーチャープレイバスケットボール 第十九章 冷めぬ悪夢 三話

第十九章 冷めぬ悪夢 三話

 しかし……。

 「ぐっ!」

 「捕まえた♪」

 理亜が敵チームのフリースローラインに着いた時、なんと佐久弥が智古の髪を片手で鷲掴みにしながら悦に入っていた。

 智古は顔を顰める。

 すると、佐久弥は智古をコートの下に叩きつける。

 その音で何事かと思った理亜が後ろを振り向く。

 「やっちまうぞお前ら!」

 佐久弥は下卑た笑みで加津地たちにそう指示を出すと、なんと佐久弥たちは俯せでいる智古に対し、三人が何度も足蹴りをする。

 まるでリンチに遭っているかのような絵面。

 「智古ちゃん!」

 理亜はボールを手放し、すぐさま智古の元に血相を変えて走り出す。

 手放したボールは駒井が手にし、理亜たちのコートに向かってドリブルする。

 既に加奈たちはディフェンスになど専念出来ず、智古の元に駆け寄る。

 その隙に、駒井はレイアップシュートを決めた。

 点数は四十四対三十一。

 そして、理亜たちは佐久弥たちを止めようと、両腕を捕縛する。

 「止めて! 止めてよ!」

 理亜は必死になってそう叫ぶ。

 「うるせえ!」

 すると佐久弥を抑えていた理亜は肘打ちを顔面に食らい、後ろに転倒する。

 「このやろー!」

 そこで、ベンチに居た奏根が怒髪天でもついたかの様に佐久弥たちに向け飛び出そうとする。

 「駄目だ奏根!」

 そこで、豪真が奏根の腹部に両手を回し、がっちりとホールドして必死になって暴れる奏根を押さえつける。

 暴力を振るう事が目に見えていた豪真は、それしかする事が出来なかったのだ。

 「ピー! 白八番、七番、六番、テクニカルファール!」

 そこで、事もあろう事か、止めていた理亜たちがファールを取られる。

 もう驚く気力もない理亜たちは、これ以上ファールを取られないため、智古の前に急いで駆け寄り、智古を庇う。

 「ふん、虫けらが」

 佐久弥は悪辣な表情で唾棄でもするかの様に言うと、自分たちのコートに戻っていく。

 「智古ちゃん! しっかりして!」

 「う、うん。大丈夫」

 理亜が智古の身体を支えながら賢明にそう呼びかけると、智古は痛みを堪えながら笑顔でそう言う。

 「ちくしょう。何でだよ……」

 暴れるのが収まった奏根は奥歯を強く噛みしめながら、悲しみと怒りに心が囚われていた。

恋を叶える陰陽師のパワーストーン

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