クリーチャープレイバスケットボール 第二十章 意地 一話

第二十章 意地 一話

 そして、四十四対三十一から試合は再開される。

 加津地がボールを手にし、ドリブルして理亜たちのコートに走っていく。

 加奈は加津地のディフェンスに専念しようとしていたが、不意に駒井が突進してきて、右ストレートの拳を振るってきた。

 加奈はそれをギリギリで避けたが、その隙に加津地が加奈を抜く。

 理亜たちは追いかけてくる佐久弥たちの猛攻を躱していたため、ディフェンスに集中できない。

 コートを縦横無尽に走り回り、攻撃を回避しているため、成すすべなく加津地がフリースローラインからフリースローを打つ。

 そこで、高貴が八鹿の攻撃を計算的に躱して、上手く加津地の前に出て、宙を舞うボールをブロックした。

 「往生際が悪い」

 その様子を佐久弥が目にすると、不快感を露わにした。

 ブロックしたボールを両手でしっかりと掴むと、すぐさまフリーになった智古に空中からパスを出す高貴。

 智古も、いつでもボールを貰えるよう、樽子の攻撃を計算して躱していた。

 パスを受け取った智古は、すぐに敵陣のコートに向けドリブルする。

 樽子が背後からドロップキックをしてきた。

 智古はそれを見越し、振り返ると、腰をしっかり落とし、踏ん張りながら、樽子の両足目掛け、ボールを持ち構える。

 そして、樽子は両足で蹴り上げたボールの反動で、仰向けの状態でコートの下に背中から勢いよく倒れる。

 「理亜ちゃん!」

 智古はすぐ横にまで走ってきた理亜に気付くと、声を上げ理亜にパスを出す。

 ボールを受け取った理亜は、何が何でも決めようと、一心不乱だった。

 佐久弥が横から、理亜を掴みかかろうとしたが、理亜はスリーポイントラインから跳躍し躱す。

 そして、敵陣のリングの上にまで跳躍していた理亜は、とどめと言わんばかりにリングの真上からボールを強く投げつける。

 垂直に叩きつけられるように投げられたボールは、佐久弥がブロックしようと、リングの真上で片手を振るおうとしていたが、理亜の力強く投げられたボールは、佐久弥の片手を置いてきぼりにするかの様にスルーし、見事ボールはリングの中に入った。

 四十四対三十四。

 理亜はバックボードの上に乗ると、コートの下で弾んだボールはリングのネットを逆にくぐり、バックボードの上で片膝を曲げていた理亜の手元にまで戻ってくる。

 それを片手でキャッチし、戦隊ものの決めポーズでも取るかのように鋭い目を佐久弥に向ける理亜。

 「くそが!」

 佐久弥は憤怒のマグマが噴火でもしたかのようにブチギレていた。

 会場の観客たちは、熱狂し、全てが熱気に包まれる。

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