
第二十章 意地 三話
そう思った理亜は絶対に決めなければならないと自分に言い聞かせた。
パスをする智古はそのタイミングで佐久弥の飛び膝蹴りを腹部に食らってしまう。
智古は二メートルは後方に蹴り飛ばされ、苦痛な表情で痛みに耐える。
パスを受け取った理亜はすぐに敵陣のリングに向かいドリブルする。
そこで、センターの八鹿がリング下で理亜を待ち構えていた。
しかも、あから様に暴力でボールを奪おうとするようにファイティングポーズを取っていた。
理亜が攻撃されることを確信した高貴は、スクリーンで体を張って八鹿を抑えようとする。
「どけ!」
八鹿は声を荒げ、左肘で高貴の右頬を強く突く。
「ぐっ」
高貴は左に向かい横に転倒してしまう。
理亜は絶対に許さない、と言う意気込みでレイアップシュートをしようとする。
八鹿は右ストレートの拳を振るってきた。
そこで、理亜はジャンプしたと同時に身体を右に捻り、少し左に身体をずらしながら八鹿の拳を躱すと、右手にボールを持ち替え、レイバックシュートでゴールを決める。
四十四対三十六
「ええーい! この無能集団が!」
智彦は激怒し、唾をまき散らす。
理亜たちは急いで自分たちのコートに戻るが、その跡をゼルチャートンソンチームのメンバーたちが追ってくる。
如何にも殴りたくて仕方ないと言った面持ちで。
理亜に対しては佐久弥と駒井が二人係で走って後を追う。
理亜たちはディフェンスをするためには、敵陣のコート側に居るよりも自分たちのコートで逃げ回った方が、対処しやすいのだ。
それは敵チームも分かり切っている事。
だからこそ、理亜たちの思惑を潰すため、佐久弥たちは打って出るのだ。
加津地が走ってドリブルしてくる。
加奈だけが狙われていなかった。
加奈はその分、ボールを奪う事に神経を尖らせる。
レッグスルーで右から抜いてくると思いきや、加津地は引き付けられた加奈の顔面に左拳を叩きこもうとした。
加奈はギョッとした表情でそれを咄嗟に躱し、加津地と距離を取ってしまう。
そこで加津地は右サイドで理亜を追いかけまわしている佐久弥にパスを出す。
佐久弥は切り替え、パスを受け取ると、スリーポイントシュートを打とうとした。
理亜は急いで佐久弥の前に出ようと駒井の拳を躱しながら走り出す。


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