クリーチャープレイバスケットボール 第二章 暗殺者の悩み 三話

第二章 暗殺者の悩み 三話

 そして、車椅子の車輪を拭き終えた明人は、理亜の車椅子を押すのを、郁美と変わろうとした。
 
 「いいよ明人、変わらなくて。それよりあんたの部屋からお菓子持ってきなさい。今夜はパーティーよ」

 郁美が笑みでそう言うと、明人は「分かった」と快(こころよ)く引き受ける。

 「そう言えば明人。私たちが居ない間に、彼女の二人や三人は連れてきたの?」

 弄ぶような、意地悪そうな笑みで明人にそう聞く理亜。

 「居るわけないじゃん。そもそもその時点で浮気だし」

 少しテンパりながら言う明人。

 理亜と郁美は互いに顔を見合わせながら、フフフ、と笑う。

 明人は少し頬を赤く染めながら部屋に向かった。

 「あ! しまった!」

 部屋でお菓子を探していた時、ふと、重大な事に気付いた明人。

 明人は大慌てて台所に向かった。

 台所に着いた明人だったが、探していた物が、見当たらなかった。

 隅々まで探したが、やはり無い。

 まるで、家宝でもなくしたかのように。

 「どうしたの? そんなに慌てて?」

 明人の背後から郁美がそう聞いてくる。

 「ねえ母さん。台所に何かなかった?」

 少しテンパりながらそう聞く明人。

 「何もなかったわよ」

 一体何にそんなに慌てているのか、見当がつかなかった郁美。

 郁美は少しキョトンとした面持ちになる。

 「……そうなんだ」

 明人は間を置き、信じられない様な様子で、台所をもう一度確認する。

 「ねえ明人。お菓子持ってきた?」

 そこで、理亜が待ちきれないと言う様子だった。

 「――あっ、ごめん。今持ってくるよ」

 明人は気持ちを切り替える様にして、再び自分の部屋に向かう。

 お菓子を探しながら、目当ての物も一緒に探すが、結局見当たらず、仕方なくお菓子だけ手に取って、居間へ向かう。

 その日の夜は、賑わいながら、家族三人で、ジュースやお菓子を団(だん)欒(らん)しながら食べたり飲んだりして、幸せな一夜を過ごした。

 一夜明け、月曜日の朝。

 明人は無くした物が気になり中々寝付けなく、寝不足の状態で起きる。

 すると、扉の前で、奇妙な物を見つけた。

 それは、張り紙がされていた何か。

 ふっくら浮き彫りになった状態の上に、張り紙が張られている。

 明人は、一体何か、と思い、生唾を飲み込みながら、それに近付き、ゆっくりと張り紙をめくる。

 すると、張り紙の下には、刃渡り5センチ程のナイフが置かれていた。

 明人は、ギョッとした様子で、そのナイフを手に取る。

 それだけではなく、張り紙には何か書かれていた。

 その張り紙には「気を付けろ。次はない」とだけ書かれていた。

 明人は、それを見て、徐々に険しい表情になっていく。

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