クリーチャープレイバスケットボール 第二十一章 痛みを超えて 二話

第二十一章 痛みを超えて 二話

 智古はシュートをブロックし、弾いたボールは加奈が手にする。

 加津地も限界に近いため、すぐに動く事が出来ず身体が一瞬、硬直してしまう。

 その隙に加奈はドリブルで佐久弥たちのコートに急いで向かう。

 ゼルチャートンソンチームのスタメンたちは佐久弥以外まともに動ける体力は無かった。

 佐久弥だけが、鬼の様な形相で、加奈に向かっていく。

 そこで、加奈の右斜め前に出た佐久弥。

 すると、左前にいつの間にか居た理亜に、片手でパスを出そうとワンハンドパスをする。

 しかし、佐久弥は加奈と理亜の間に既にいた。

 そのボールはまっすぐパスを出されるのかと思いきや、なんと、右斜め前に曲がる。

 曲がったパスの行き先は、コートの下にいる高貴にだった。

 高貴はそれを受け取ると、リングの下からダンクで決める。

 観客たちは熱狂していた。

 「くそっ! くそっ! くそっ!」

 智彦は惨めに見えるくらい、怒りで我を忘れているような様子。

 点数は四十七対四十五。

 二点差まで追いつく事が出来た。

 「ピー! 第3クウォーターを終了します!」

 第三クウォータ―が終わり、審判の中年の男がホイッスルを吹くと、会場中にブザーが鳴る。

 各々の選手はベンチに戻っていく。

 「この役立たず共が! 貴様らにどれだけ金をつぎ込んだと思う!」

 智彦は激怒し、声を荒げる。

 しかし、理亜たちはそんな相手を気にする余裕は無かった。

 その訳は、理亜たちの体力が示している。

 「はあー。はあー、……はあぁー」

 理亜たちも体力の限界に近かった。

 あれだけ逃げるのに走り回っていたら、通常の試合の三倍以上のスタミナを消費するからだ。 

 呼吸を荒げながらタオルで汗を拭いたり、スポーツドリンクをがぶ飲みしたりと、著しい状態ではない。

 そんな理亜たちを心配そうに見る、豪真と奏根。

 奏根は自分の不甲斐なさに奥歯を噛みしめる。

 「皆、泣いても笑っても後、十分だ。悔いのない試合をして来い」

 豪真は慰めや心配の声でなく、背中を押す暖かい言葉をかける。

 「うん。絶対に勝つよ」

 智古が辛い表情でいながらも、目に闘志を宿らせ口にする。

 「私はまだバスケがしたいです。あんな非道な人たちの手によって、足を踏み止まらせるつもりはありません」

 加奈も気合を振り絞って口にすると、高貴が「ええ。私たちも同じ思いです」と同様な形相で口にする。

 すると、理亜は目を瞑り大きく深呼吸をすると、目をばっちり開く。

 「ねえ皆。この試合終わったら、焼き肉食べにいこ」

 満面の笑みでそう喋る理亜に、一同は一瞬キョトンとした面持ちになると、笑顔を見せる。

 「たく、お前は金ないくせによく言えるな」

 奏根は呆れながらも頬に笑みを浮かばせる。

 「まあ、まあ、そんな事言わないであげなよ。私は大賛成だよ。皆は?」

 智古も笑みを浮かばせながらそう言うと、豪真たちも頬を緩ませながら頷く。

 「よし! 勝とう!」

 「「おおーー!」」

 理亜の気合十分な声に、同調したかのように唱和する豪真たち。

 そして、休憩が終わり、第四クウォーター開始前のホイッスルが鳴る。

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