
第二十二章 辿り着いた頂き 二話
エンドラインから智古が加奈にパスを出す。
すぐに、瑠偉が「いい加減くたばれ!」と語気を強め。握り拳を、加奈の左頬に叩きつけようとした。
加奈はフロントチェンジで、それを右に躱し、右から抜くと、ドリブルで走り出す。
「加奈ちゃん!」
智古が加奈の前にまで走ってきて、ボールを受け取ろうとした。
それを見た佐久弥が、智古に向かっていく。
智古とマッチアップしている妙子は後ろから、ドロップキックを決め、智古は俯せで倒れてしまい、ボールは佐久弥が手にしてしまう。
佐久弥はそのまま、理亜たちのコートに向かってドリブルしていくと、理亜が自分たちのコートのセンターサークルでディフェンスの構えを取っていた。
そこで、理亜に付きまとっていた亮が、理亜に向け右拳を理亜の左頬に叩きこむ。
拳が当たってしまった理亜だが、怯まず、歯を食いしばって、佐久弥のボールを奪いにかかる。
佐久弥は悪意を込め、にやりと笑い、取れるもんなら取ってみろ、と言わんばかりに、フロントチェンジやレッグスルーなどで揺さぶりをかける。
理亜はそれでも、釣られず、ハンズアップやステップで、佐久弥の進行を止めていた。
しかし、その間、亮が過剰な暴力を理亜に振るう。
何度も殴られ、蹴られ続け、ついに力尽き、その場で俯せで倒れてしまった理亜。
それを見て、嗜虐的な笑みで見下ろす佐久弥と亮。
「ほんとろくでもないね、あんたたち!」
佐久弥の横から鋭い声と共に現れたのは智古だった。
その声にギョッとした佐久弥だったが、時すでに遅く、智古は、横で呑気にドリブルしていた佐久弥からボールを奪ったのだ。
「まだ動けたのか!」
佐久弥は気に入らないと言った様子で、自分たちのコートに向かってドリブルしている智古に怒号を飛ばす。
「――ごめん理亜ちゃん。ごめんね」
智古は殴られ続け力尽きた理亜に対し、涙ながら何度も切ない声で謝り続けると、スリーポイントシュートを放つ。
「させるか!」
そこで、そのボール目掛け、ジャンプしようとした佐久弥だったが、加奈が佐久弥の前に現れ、スクリーンをかけ、佐久弥の行く手を阻んだ。
「邪魔だクソヤロー!」
「うっ!」
止められた事に激怒した佐久弥は、ぶち切れ、加奈の腹部を強く殴る。
殴られ、倒れ込む加奈。
智古が打ったシュートは、豪真たちが心の底から祈る中、何とか決まった。
しかし、決まっても喜ぶ事が出来ない豪真と奏根。
その理由は明白で、理亜たちの疲労や、痛みの蓄積によるものだった。


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