
第二十二章 辿り着いた頂き 三話
全身痣だらけで、呼吸がまるで安定していない程の過呼吸に近い状態。
豪真と奏根は、自分たちが何もしてやれない不甲斐なさと怒りで、どうにかなりそうな気さえした。
「後二分か……まあ、何とかギリギリのラインで奴らを刈る事が出来た。後はこちらが一方的に点数を取り続けるのみ。フフッ。勝負ありだ」
智彦はにたりとした歪んだ笑みで、勝利を確信していた。
五十五対の五十五での同点でも、理亜たちはすれすれまでに疲弊し、万事休す。
そんな理亜たちに、薄ら笑いを向ける佐久弥たち。
加奈や理亜は痛みに堪えながら、オフェンスに切り替えようとするが、その動作は、あまりにも悲痛な表情をしていた。
「さあ、踏ん張りどこだよ」
会場で渋い表情で観戦していた由紀子が、そう口から漏らすように言う。
智古が加奈にパスを出すと、オールコートで当たっていた佐久弥たちは、またもやラフプレーに走る。
過剰な暴力を振るうため、パスをすぐに受け取った加奈に対し、瑠偉が横蹴りを入れてきた。
躱す体力と余力がない加奈は、すんなりと受け入れる様にその攻撃が当たってしまう。
「うっ」
痛みに堪えながら、二発目に攻撃が来た時には、気力を振り絞り、ロールターンで左に躱す。
「もう、ボールを盾にして防ぐと言う、判断力まで失ってしまったか」
豪真が辛い表情で、奥歯を噛みしめながらそう言うと、奏根は「……みんな、どうか無事に終わってくれ」と涙を流しながら両手を握り、口にする。
加奈がドリブルして、敵陣のセンターサークルまで足を踏み込んだ時、ヘルプで亮が、加奈に突っ込んでくる。
右サイドから突っ込んできた亮は、加奈たちがボールを盾にして攻撃を防ぐと言う、判断力が失った事に気付いていた。
亮は、加奈の顔面に拳を叩きこもうと、拳を振るう。
加奈は、フロントチェンジで左に躱そうとしたが、そのキレは鈍り、上手く躱しきれず、右頬をかすった。
それでも集中力は切らさず、左斜め前に居る、智古にパスを出す加奈。
智古は、既にマッチアップしている妙子の攻撃を受けながらも、果敢にも前に出て、加奈のパスを受け取ると、ノーフェイクでジャンプした。


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