
第二十二章 辿り着いた頂き 四話
妙子も跳躍し、その間、智古の脇腹や、腹部を殴り続ける。
痛みに堪えながら、左手で、自分をカバーしながら、フックシュートをした智古。
そのシュートに願いを込める豪真と奏根。
しかし、殴られ痛みに耐えながら放ったそのシュートは、余りにも不安定で、バックボードの上に当たり、そのままエンドラインを通り過ぎる。
「はあっ、はあっ、がはっ!」
お腹を押さえながら、とうとうコートの下で両膝と両手を付けてしまう智古。
「智古ちゃん」
もう、叫んで駆けつける余裕すら無くなった理亜たちは、呼吸を乱しながら、智古の安否を気にする事ぐらいしか出来なかった。
そして、佐久弥たちは、エンドラインからすぐにボールを瑠偉に渡すと、そのまま理亜たちのコートにドリブルして向かっていく。
誰もが佐久弥たちを追いかけると思った観客たちだったが、その期待には応えられなかった。
ドサッ。
なんと、佐久弥たちを追いかけようとした理亜たちは智古に続く様に、俯せでコートの下に倒れてしまったのだ。
佐久弥は、レイアップシュートを決め、五十七対五十五になってしまう。
「どうやらここまでだな」
智彦は悪質な笑みで勝ち誇っていた。
「試合続行不可能なら、このままゼルチャートンソンチームの勝ちとするが、どうする?」
審判の中年の男が、理亜たちに近付き、重くのしかかった声音でそう言う。
歯を食いしばりながら、自身たちの身体を、奮い立たせる理亜たち。
豪真と奏根は、見ていられない悲惨な光景に、絶句していた。
凄惨な気持ちで立ち上がった理亜たちは、智古がエンドラインから加奈にパスを出す。
しかし、もう走る気力すらなかった理亜たちは、呼吸を乱しながら、ただ点を取り返したいが一心に、足を引きづってでも佐久弥たちのコートに向かっていく。
だが、そんな健気に頑張る理亜たちを潮笑うように、瑠偉が加奈の腹部に前足蹴りを入れ、転倒させる。
「うっ、はあー、はあー」
加奈は避ける気力すらなく、成すすべなく蹴り倒され、ボールを奪われてしまった。
ボールを奪った瑠偉は、もう追われる事も無いと確信していたため、ゆっくりと歩いて行きながら、理亜たちのコートに向かってドリブルしていく。
理亜たちも、佐久弥たちに殴られ、横向きや仰向けで倒れてしまう。
瑠偉がフリースローを決め、点数は五十九対五十五になってしまった。
残り時間は一分を切っていた。
豪真は頭を抱え、もうどうにもならない、と悟ってしまう。
奏根は下唇を嚙みながら震えていた。
ここまでなのか?


コメント