クリーチャープレイバスケットボール 第二十二章 辿り着いた頂き 五話

第二十二章 辿り着いた頂き 五話

 「ふん。お前らの命運はここまでだ。さっさとこのコートから消えるんだな」

 佐久弥は倒れている理亜を見下しながら口にする。

 「はあー、はあー」

 呼吸を整えようとするだけで精一杯の理亜たちは、自分たちが負けてしまう、と心のどこかで感じ始めた時だった。

 トクン、トクン、トクン。

 理亜のペナルトギアから、まるで生き物の様に感じる鼓動が、理亜の脳髄にまで響いてくる。

 それを感じ取った理亜は、まるで、何か得体のしれない歪な物に、身体が侵食されているようなイメージが湧く。

 そのペナルトギアは、足から徐々に全身に歪な血流を流すように理亜の身体に伝わってきた。

 トクン、トクン、トクン――。

 全身が、心臓になったかのように、あらゆる所から鼓動が理亜の耳に響いてくる。

 「ん、何だあれは!」

 智彦が、いつの間にか立ち上がった理亜を見て、驚愕した。

 その理亜の身体からは、黒い歪な模様が、全身に侵食されているかの様に、描かれていた。

 それを見た佐久弥たちも驚愕する。

 目を瞑っていた理亜は、徐々に目を開けていく。

 内なる未知な力が湧き上がっているのが、自分でも良く分かっている感じの、自然な眼差し。

 その様子を見た豪真が、口を半開きにし、打ち震えていた。

 「とうとう来たか」

 フルフルと体を震わせながら、まるで待ち侘びた様な様子になる豪真。

 「……高貴ちゃん。辛いと思うけど、私にパスを出して」

 「はあー、はあー。……理亜さん」

 理亜は穏やかな声音で高貴に振り向かずそう言うと、高貴は辛そうな表情で何事か、と思いながら、理亜の名を口にする。

 「大丈夫、後は私に任せて、皆は休んでて」

 智古や加奈、高貴は後ろ姿で語り終える理亜の背中を物悲しさにふけながら見ていると、理亜は優しい顔で振り向いてくれた。

 そして、智古たちは互いの顔を見合わせながら、頷く。

 理亜の言葉を受け入れた智古たちは、後は理亜に託そうと、疲弊した身体を引きづって動き出す……。

 残り時間は三十秒を過ぎていた。

 理亜に思いを託したそのパス。

 パスを受け取った理亜を待ち構えていたかのように、佐久弥と瑠偉、亮が一斉に殴りかかってくる。

 「しつけえんだよ! 不出来な不良品のくせに!」

 激を飛ばしながら殴りかかってくる佐久弥だったが、そこで、理亜は暖かい瞳のはずなのに、どこか冷気を帯びているかのような目を、ゆっくりと佐久弥たちに向ける。

 すると、先程まで殴りかかろうとして来た佐久弥たちに異変が起きる。

 その異変を感じ取れるのは、誰であろう、殴りかかってきた佐久弥たちだけだった。

 (……あれ、遅い。……意識が、遠く……なって……い……く)

 佐久弥たちの意識が遠のく様に、目もうつろになり、振るってたはずの拳は、ゆっくりとしたものになっていた。

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