クリーチャープレイバスケットボール 第二十二章 辿り着いた頂き 六話

第二十二章 辿り着いた頂き 六話

 理亜は、散歩でもするかの様に、ゆっくりと、佐久弥たちの間をドリブルして通り過ぎる。

 すると、明らかに佐久弥たちが普通ではない事を実感した、妙子と周遊は、一目散に理亜に向かい、特攻する。

 理亜は冷静な心で、避ける素振りすら見せない様な感じで、妙子たちと真正面からぶつかる。

 妙子と周遊は、右ストレートの拳や、ミドルの蹴りを入れようと、モーションに入っていた。

 だが、理亜は何もしない。

 ただ、いつの間にか意識が遠のいている、妙子たちの間を、何気ない日常を生きているかのように通り過ぎると、フリースローラインからフリースローを打つ。

 ゴールが決まるまで、何故か、会場中は静寂となり、何が起きているのか分からない状態だった。

 そして、ゴールが決まり、数秒後に、会場中が動揺し始める。

 どよめく会場の中で、由紀子だけが「とんでもない広い物をしたね。あいつは」と不敵な笑みを浮かばせ、ぼそりと呟く。

 「くそ! なんだ⁉ 何が起きた⁉」

 佐久弥たちが我に返る様に意識を取り戻した時には、発狂でもするんじゃないかってぐらい、動揺する佐久弥たち。

 「……いったい……これは」

 先程まで上機嫌だった智彦も、顔を青ざめる始末。

 「……早くしてよ。私たちの時間を無駄にしないで。それとも何? あれだけいきってたのに今更怖気付いたの?」

 理亜はセンターサークルで佐久弥たちに向け、無表情にそう言う。

 その言葉の声音は、明らかに冷めきった言い方だった。

 「なめやがって! お前ら! とどめを刺すぞ! こいつを二度と日常を謳歌できないくらい再起不能にしてやれ!」

 理亜の挑発に乗ったその言葉で、正気を取り戻したかのように、妙子は、怒りに身を任せ、エンドラインから瑠偉にパスを出す。

 残り時間は十秒を切る。

 それと同時に、周遊と亮、佐久弥が、一斉に、理亜に向け、奇襲をかける。

 理亜はセンターサークルで、ただ棒立ちしているだけなのだが、その攻撃はスローモーションになるのでもなく、ただ、ただ、佐久弥たちの意識がしっかりとありながらも、どこか遠のいていく。

 理亜は、全ての動きと空気を掌握しているかの様に、眉一つ動かさず、ただ、ボールを持っている瑠偉に向け、歩き出した。

 ゆっくり歩いているはずのなのに、その動きは、正に刹那だった。

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