
第二章 暗殺者の悩み 五話
似た要素があるからこそ、打ち解けあえ、親友になった二人でもある。
「スイーツロードで有名なのに、砂川には観光客とかあんまり来ないよね?」
「まあ、良い反面、治安も少し悪いし、仕方ないわね。六年前、飲酒運転で四人の家族が巻き込まれて、三人が死亡して、一人の女の子が、左足を失うほどの大けがを負わされたんですもの」
理亜は疑問に思った事を、そのまま口にすると、文音はどこか暗い面持ちで喋る。
そして、登校中、歩道の電柱柱に何束の花が添えられていた。
「ここだよね。六年前での飲酒事件の事故現場」
「ええ」
理亜と郁美はその場で止まり、手を合わせ、目を瞑(つむ)り、祈る。
偲(しの)ばれる思いで。
祈り終えると、二人は無言で頷きあい、学校へ向かう。
「ねえ、理亜ちゃん。バスケット続けられるんじゃないの? 部員の皆も、理亜ちゃんの復帰、楽しみにしてるし」
「うーん。分かんない。取り合えず経過を見てからかな」
砂川高校に着いた、理亜と文音が通ると、通り過ぎる生徒たちが理亜の足を見て、驚きを隠しきれない様な表情をしていた。
「え! 千川! 足⁉」
「うん。義足だよ」
男子高校生が嬉しすぎるあまり、笑顔で理亜の右足に突っ込む勢いで近付き、驚愕する。
理亜は笑いながら、ブイサインをする。
そして、校舎の廊下を歩いていても、驚く生徒ばかりだった。
教室に入ると、クラスメイトもフレンドリーに、理亜と文音に挨拶をする。
「おはよう。――て千川! 足⁉」
「もうそのリアクションは飽きたわ。やり直して」
一人の男子高校生も、皆と似たようなリアクションなため、文音はそのリアクションに飽きていたのか、辟易とした様子になってしまう。
「何がやり直しだよ。誰だって同じ反応するに決まってるだろ」
「そうだ。そうだ。古代こそ、スイーツ食べてから壮大なゲップする所だって、こちとら飽き飽きじゃわい!」
「ちょっと! それ少数の人しか知らない、私のトップシークレットよ!」
反発する男子生徒に対し、文音は動揺しながら叱(しっ)責(せき)する。
「おい皆! 千川を胴上げしようぜ!」
「いいねえ! やろーやろー!」
「て、何で胴上げされる本人がそれ言っちゃうの」
男子生徒が意気込んで理亜を胴上げしよう、と言うと、何故か理亜が共感したかのようにはしゃぎながら賛同する。
そんな理亜を見てクラスメイトの女子生徒が笑いながら指摘する。
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