
第二十三章 思わぬ展開 三話
「待ってください。本題がまだです」
「――本題?」
背後を振り向くことなく口にする銅羅に、身体をビクッとさせて立ち止まり、銅羅に振り向く智彦。
「……なんですか? 本題とは?」
「まあそう警戒しないでください。すぐに終わります」
智彦は訝しい目で銅羅を見るが、その口ぶりとは裏腹に、銅羅の周囲を覆う空気が、どこか冷たく、重く感じる。
そして、銅羅はゆっくりと、智彦に振り向く。
「そう、すぐにね」
ゆっくりと振り向いてきた銅羅の表情は、まるで冷酷無慈悲を生業とした、狩人の様な。
獲物に何の同情や憐れみを感じさせない様な物だった。
すると、銅羅が智彦たちに振り向いた瞬間、妙子が「うっ」と呻き声を上げ、後ろ向けで倒れたのだ。
「なっ!」
何事かと思った智彦たちは、倒れている妙子に目を向けると、妙子は額から血を流し、絶命していた。
「――こ、これは、どう言う事だ!」
智彦は狼狽し、釣られるように、佐久弥たちも動揺する。
すると、コツコツとした足音がゆっくりと、銅羅の居る方向から聞こえてくる。
智彦たちは、狼狽えた表情でその方向を注視すると、暗闇から溶け込んでいたようなその何者かが、姿を現す。
照明に照らされて現れたのは、なんと、明人だった。
明人は冷気を帯びた瞳で、睨みつける様にして、手にしているサイレンサーを取り付けた銃口を智彦たちに向ける。
銅羅の横に並んで立つ明人に、智彦たちは、足がガタガタ震えるのを感じ始める。
「銅羅さん! 一体何のつもりなんだ⁉」
切羽詰まった表情で怒鳴り散らす智彦。
「あなたたちの先程の試合は、VTRで見させてもらいました。あれ程、見るに堪えない試合は、生まれて初めてです」
「あの試合は、審判の公認の元で執り行われたものだぞ! 貴様が出しゃばる言われはないはずだ!」
涼しく口にする銅羅に対し、智彦は別人の様になり、激怒する。
「運営委員会と、審判の裁量は別物ですよ。貴方たちが暴力で支配した事に関しては、100歩譲って黙認するとしても、最後の千川さんのあのシュートがブザービーターではなく、ノーゴールと言うのが解せない。我々運営委員会としては、クリプバの秩序を乱した貴方たちには厳罰が必要なんですよ。……死と言う厳罰がね」
冷酷な面持ちを匂わせる様にしながら冷たく銅羅がそう言うと、明人は何発も発砲する。


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