
第二十三章 思わぬ展開 四話
「キャアアー!」
「くそ! どけ!」
恐怖で悲鳴を上げる選手たちが次々と射殺されていく中、智彦は死体や生存者を押しのけて、フロントに繋がる扉を急いで開けようとした。
しかし、扉はびくともせず、開かなかった。
「そ、そんな」
智彦は絶望した様な表情になると、身体を震わせながら銅羅達に振り向く。
「それから智彦さん。貴方に先程質問した意図は、貴方に開墾や贖罪の気持ちがあったかどうかだったんです。ですが勘違いしないでください。その気持ちは、千川さんたちにでなく、私たちにあるかどうか。貴方が言う視座する立場でいると思うと、同情しますよ」
呆れながら冷めた声音でそう言う銅羅。
「ど、銅羅さん! この度は無聊な試合をお見せしてしまった事を、深く謝罪します! どうか、私だけでも助けてください!」
「――! 監督⁉」
生き残った佐久弥が狼狽えながら土下座する智彦に対し驚愕する。
絶望を通り越し、もはや智彦には怒りしか湧いてこなかった佐久弥は「このゲスヤロー!」と言って智彦の顔面を強く蹴る。
智彦は痛みなど気にせず、姿勢を崩されても、再び土下座をしていた。
そんな智彦を目にした佐久弥は瞳孔がどす黒くなる、
それ程、智彦に対して憤怒していた。
「やれやれ、騎虎したドブネズミが頓挫する姿は、いつ見ても見るに堪えない物だ。ではごみ処理を、引き続き頼むよ。スフィア」
銅羅は肩をすくめながらそう言うと、智彦たちに背を向け、その場を去っていく。
「待ってください! 銅羅様! もう一度私目にチャンスを!」
「……もう、その口を閉じてろ」
智彦が頭を上げて、片手を伸ばし続け、必死な形相で銅羅に懇願するが、銅羅はまるで耳を貸さず、去っていく。
スフィア、つまり明人は、怨嗟を込めた眼差しで、冷徹な言葉と共に、一発の弾丸を放つ。
その弾は、智彦の額に当たり、智彦は絶命した。
帯びたたしい血を辺りに流しながら、佐久弥だけが生き残った。
佐久弥は遠い目をし、もう自分の終わりを悟ってしまう。
「くそ、くそ」
佐久弥はその場でつっ立ったまま嗚咽を漏らしながら、悔しさと恐怖で顔を歪ませる。
「お前もすぐあの世に送ってやる。姉ちゃんたちに暴行を負わせ、剰え、偽りの勝利をもぎ取った。ただ死ぬ事すら生ぬるいんだ。お前たちがやってきた所業の代価は」
明人は佐久弥を睨みつけながら、銃口を、佐久弥の額に向ける。
「……もう良い。殺したければ殺せよ。どうせ、もう二回戦にも出れない。私たちには勝つ事でしか未来がなかったのに」
大粒の涙を流しながら、むせび泣く佐久弥。


コメント