
第二十五章 つかの間のキャンプ 三話
そして、その日の内に、智古の家に招待された理亜たち。
新築の広々とした橙色の一軒家。
二階建てで、敷地には、ガーデニングを出来るほどのスペースもあり、野菜を育ててもいた。
中に入ってみると、リビングの大きさは、畳み三十畳はある。
そんな豪華な家に、理亜は度々、食事をしに招き入れて貰っていて、郁美たちも頭が上がらない程。
「相変わらず、智古ちゃんの家って凄いね。お父さんとか、どんな仕事してるの?」
「ん? お父さんは洋菓子店や和菓子店の社長だよ」
理亜はボケーとした呆気にとられた様な表情で何気なく聞くと、智古も何気なく答える。
「えっ⁉」
思わず一驚する理亜。
「凄いね……もしかして、北菓楼のシュークリームや、ホンダのアップルパイも関係してるとか⁉」
「うん。あそこはお父さんの系列店なんだ」
「すごっ!」
理亜は、ハッと思い出したかのように、慌ただしくそう聞くと、笑顔で答える智古。
度肝を抜かれたかのように、驚く理亜。
「それにしてもいいのか? 大の大人である私まで招き入れて?」
「いいの、いいの。監督にはお世話になってるし、今日と明日は、お父さんとお母さんも仕事でいないから」
「「へえー」」
少し控えめに真っ当な事を聞く豪真に対し、智古は相も変わらない笑顔で答えると、一同は感嘆の声を漏らす。
「智古ちゃんって懐が深いね。誰かさんとは大違い」
「おい、ふしだら女。それを俺に対していってるなら、今度からお前に食わす飯だけ、豚の餌に変えるからな」
「うわーーー! 冗談ですーー!」
理亜がニシシ、見たいな悪だくみの様な素振りで、あたかも奏根に言った様な感じを受け取った奏根は、凄みを利かせるみたいな、鋭い眼光で、理亜に忠告する。
たまらず、音を上げる理亜だった。
それを目にした豪真たちは、腹を抱えて爆笑していた。
「さ、まずは食べようか」
「大丈夫ですか? 即決したばかりだと言うのに、私たちの人数分の料理など?」
高貴が申し訳なさそうにそう言うと、智古は「大丈夫。大丈夫」とご満悦の様な表情で答えると、大きい冷蔵庫を開ける。


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