
第二十五章 つかの間のキャンプ 四話
すると、七キロ分はあると見える、牛肉を取り出した智古。
「凄いです! ここまで艶と張りの良いお肉は」
「凄いでしょ? これA―五牛だよ」
「七キロ分もですか⁉」
まさかの肉に驚く加奈の言葉に追い打ちをかける様な衝撃的な一言を口にする智古。
高貴も思わず驚愕する。
「えっ! 高貴ちゃんでも驚くの?」
理亜は、高貴の振る舞いや、印象で、高貴がお嬢様に見えていたため、実際、高貴の家は、智古以上の豪邸だった。そんな高貴でも肉に驚くのか? と疑問に思い、思わず聞いてしまう。
「ええ。一般家庭で、A―五ランクの肉を食べれるのは稀です。ましてや、砂川は田舎ですから、売っている店は、ほぼ皆無でしょう」
「あ、そう言う事か」
「? どうしましたか?」
「うううん! 何でもないよ」
理亜は高貴の価値観が、一般家庭での基準に考えていた、ただの感想だと知ると、本音がこぼれてしまう。
そんな理亜の反応を見て、高貴がキョトンとした面持ちで首を傾げると、慌てふためきながら話を逸らそうとした理亜だった。
「やっぱあいつも天然だな」
それを呆れて見ていた奏根。
「高貴ちゃんの言う様に、砂川でA―五ランクのお肉なんて買えないから、ネット通販で買ったのよ」
「そうなんだ」
考えてみたら、そう言う事か、とふに落ちた理亜。
「じゃあ早速食べようか。キャンプと言えばやっぱりバーベキューでしょ♪」
無邪気な子供の様な振る舞いで、黙々と、バーベキューの準備に取り掛かる智古。
リビングのど真ん中に、バーベキューコンロと卓上グリルをセットし、更に、冷蔵庫にある色とりどりの野菜など、厨房に出していく。
野菜を軽く水洗いし、厚切りにし、ある程度、切り終えると、いよいよ、主役の、A―五牛の肉も、分厚く切っていく。
理亜は、目を輝かせながら見ていた。
「俺たちも何か手伝おうか?」
「良いよ気にしないで。皆、練習で疲れてるんだし、適当にくつろいでて」
奏根が気遣うが、智古はなんてことはない、と言った様子で、テキパキと慣れた手つきで、料理を続ける。
お言葉に甘えて、高貴はリビングに置いてある、巨大なテレビにスイッチを入れ、エンタメを見始める。
相変わらず、芸人の、下ネタすれすれのネタに、頬を紅潮させ、両手で開いた口を塞いでいた。
奏根はボールハンドリングをして、加奈は、同人誌を描き始める。


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