
第二十五章 つかの間のキャンプ 六話
固唾を呑んで、額から汗を流して見守る理亜。
「やはり続行です。同人誌を描く際にも、職場には、男女共々共同で作業してますし、これぐらいで音を上げてたら、理亜さんは、何時まで経っても、アマチュアのままです。理亜さんがアマチュアを脱してくれさえすれば、私も助かると言うもの。さあ、理亜さん。いっちょ頼んます!」
結論を出した加奈は、大胆不敵な相好で、どっしりと構えながら、言い切ると、最後には鼻息を荒くしながら、ノートとペンを持って、理亜の前でスタンバる。
頭がクラクラとする理亜は、昏倒でもするかの様に、その場で膝を床に付けてしまう。
「あれ? 加奈ってそっちのけ、あったっけ?」
天井を見ながら、眉を少し顰め、小声でぼやく奏根。
高貴は額から汗を流して「アハハハ」と苦笑いしていた。
全ての望みを失ったかの様な理亜は、どう言って良いのか分からず、心ここにあらず、と言った様子だった。
「加奈、さすがに私も目のやり場に困るんだが?」
そこで、助け船でも出すかの様に、豪真が紳士的な気遣いをする。
豪真も、流石にまずい、と思ったのか、少し動揺している。
「豪真さん……」
キラキラとした瞳を、豪真に向ける理亜。
そこで、もう一度、加奈は目を瞑り、渋叔父の表情になる。
「……分かりました。では間を取って、理亜さん、脱いで下さい」
「「えっ⁉」」
まさかの、意を決したかの様な、加奈の言葉に、全員が一驚する。
「待ってよ! 間も何も取ってないじゃん!」
「問答無用です! さあ! 理亜さん! 世界ナンバーワンはすぐそこです! ギャラも良いですから!」
「そんなギャラいらないーーー!」
ツッコむ理亜を置いておきぼりにして、加奈はスパルタママ見たいな手際で、理亜を無理やり脱がせようとする。
たまらず、理亜は泣き叫ぶと、ここに居ては犯罪者になる一番の優良候補、豪真は、尻に火が着いたかのように、慌ててトイレに駆け込む。
「いやあ♪ 青春だねえ~♪」
それを、新米教師が一皮剥けた感じのお姉さん口調? で爽やかに見守る智古だった。
バーベキューを楽しみながら、どんちゃん騒ぎの理亜たち。
「こらふしだら女! それ、俺が育ててた肉じゃねえか!」
「ムフフフッ」
奏根が、じっくり見守りなが、野菜と肉が刺さっていた串を、横からかっさらい、躊躇いなく口に入れる理亜。
隣で激怒する奏根を、ほっといて、肉に食らいつきながら、品性の欠片もない笑みで、ムフフと笑う理亜だった。


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