
第二十五章 つかの間のキャンプ 七話
三時間後には食べ終えた理亜たち。
七キロあった肉は、綺麗さっぱり無くなっていた。
「ふうー。食べたー」
「お前だけで四キロは食ってたんじゃないか?」
「清々しいくらいの食べっぷりでしたね」
「どこがだよ。ただの肉食怪獣、肉リン、みたいな称号が付きそうだぞ」
たらふく食べた理亜は、ご満悦の様子で、お腹を摩ると、奏根が呆れ、高貴がにっこり笑いながら、心露わにする。
奏根は、憎たらしい、ガキんちょでも見るかのような目で、辟易と語る。
「さあ皆。デザートの時間よ」
「よっ! 待ってました!」
「お前、まだ食うのか?」
智古が、にっこりスマイルで、リビングの玄関のドアを開けながら何かを引っ張る様に言うと、理亜が、待ち侘びた主役を出迎える様な、歓喜の声を上げる。
豪真は呆れていた。
「よっこいしょ。よっこいしょ」
「「ええっ‼」」
なんと、何かを引きずる様に持ってきた智古の手には、巨大な透明のポリエステルの袋だった。
その中には、大量のマシュマロが入っている。
北海道、札幌の、雪祭りに出てくる、氷で作った彫刻のアート並みの大きさ。
その大きさに、思わず、声が裏返る、豪真たち。
理亜だけが、キラキラと目を輝かせながら、喜んでいた。
「こんなサイズ、コストコにも売ってませんよ」
「もう言葉が出てこんわ」
あっけらかんとして、コストコの商品の大きさと比べる加奈、
脱力した見たいな奏根は、ガックシと肩を落としていた。
「あれえ。皆なんでテンション低いの?」
智古が、キョトンとした面持ちで、首を傾げる。
「あのう。智古さん。いくら食べ盛りな私たちでも、あれだけの量のお肉を食べた後だと、さすがにちょっと、量が多い様な」
高貴が、控えめな態度でそう言うと、智古は「多い? 全部で十キロぐらいだよ?」
「「多いわ!」」
何を言ってるのか、珍紛漢紛の智古はそう言って首を傾げると、豪真たちは一斉にツッコんだ。
「分かった。じゃあ、私が八キロ食べるから、皆は二キロで良いよ」
「いやあ、それでも二キロって……」
智古は笑みを浮かべながら、そう提案するが、奏根は引きつった顔で、物申そうとした時だった……。
「――ずるい! 智古ちゃんだけ八キロも食べるなんて!」
「「そっちかい‼」」
駄々っ子みたいに、口論する理亜に、熱のこもったツッコみを入れる豪真たち。
「と、とにかく、私は少しで良いので」
「私もです」
「俺も」
「私は遠慮しておく」
加奈が、少し慌てながら口にすると、高貴、奏根、豪真は額から汗を流しながら答える。
「じゃあ理亜ちゃん。四キロずつ食べようか。甘い物は別腹だし」
「うん。そうだね」
「……いや、こっちは二キロもいらないんだけど」
智古と理亜が和解すると、奏根は呆れながらぼやく。


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