
第二十五章 つかの間のキャンプ 十話
そして、深夜の一時になると、リビングに設置してあるテントに、全員が入る。
「私は出来れば、一人の方が良い気がするが?」
「何言ってんの。私たちはもう、運命共同体みたいなもんでしょ? ここで豪真さんが男性だからって、豪真さんをないがしろにしてたら、バスケットプレイヤー以前に、人として廃ると言うものだよ」
訝しい瞳で、智古に提案する豪真だったが、江戸っ子溢れる、板前の店主、見たいなノリで即答する智古。
仕方なく、豪真は深い溜息を吐いて、敷かれた寝袋に入る。
「それでは就寝としますか」
「はい。明日も休みですが、余り夜更かしすると、何時もの日常に、支障をきたしますしね」
高貴が、笑顔でそう言うと、加奈がテキパキ答える。
加奈も、皆との練習や、日常を謳歌していたおかげか、前より、オドオドする機会が減っている。
その事に、逸早く気付いた、豪真は、横になりながら、どこか誇らしく思う。
「じゃ、皆、お休み~♪」
「「お休み」」
智古がほんわかする様な声音でそう言うと、理亜たちはそう答える。
上に吊るされているランプを消し、就寝する理亜たち。
すると……。
――ブッ!
「――ウアアァー!」
テントの中で、壮大なおならと、ゲップが響き渡る。
「ちょっと豪真さん!」
「えっ⁉」
理亜が、けしからん! 見たいな態度を取ると、豪真は、身に覚えがないはずなのに、動揺する。
そこで、理亜の隣で寝ていた、奏根が、寝袋から足を出し、理亜を強く蹴る。
「いたっ!」
「お前が犯人なのは、俺と高貴が知ってんだぞ。往生して、尻と口を閉じて、黙って寝ろ」
「あははは」
理亜が大袈裟なリアクションで痛がると、嫌顔で奏根がツッコむ。
高貴は苦笑いをしていた。
そのやり取りを聞いていた、加奈と智古は、笑いを堪えていた。
「理亜の奴。今度、家で食事をする時は、精進料理しか食わさんぞ」
豪真はと言うと、小声で悲痛な胸の内を吐露していた。
そして、理亜たちは二日間の室内キャンプを満喫し終えると、ようやく、砂川市立総合体育館で練習を再開する。


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