
第二十六章 闇の究明に向け 一話
理亜たちが、二回戦まで、残り、二日と言った時期だった。
砂川県警の刑事、輝美と善悟は、クリプバの大会に乗り込もう、と言う算段を立てていたはずだが……。
「見事当てが外れたな。まさかクリプバの本会場で、出禁食らう羽目になるとは」
善悟が、車の中の助手席でトホホ、見たいな感じで、落胆していた。
「お前が、迂闊に警察手帳、受付前のフロントで落としたかだろ。あそこは政治家関係者は入れても、俺達みたいな役所の人間はお断りなんだ。行く前に言ったろ」
運転しながら呆れる輝美。
善悟は「やってらんねえー」とだらけていた。
「で、どうすんだ? もう策は無いんだろ?」
だらけながらそう聞く善悟。
「お疲れモードのとこ悪いが、ここからが本番だ」
「はっ⁉ どういう意味だ?」
輝美が淡々とそう言うと、善悟は、ドッキリでも食らったかのような反応で、背筋を伸ばす。
「そもそも、会員になる事自体は、次善策、以前の問題だ。俺が狙っているのは、会場の出入りじゃなくて、会場の裏に隠れ潜んでいる、悪党の掃討」
なんの動揺もなく、流暢に語る輝美に、善悟は首を傾げる。
「そりゃ、大本を根絶させるのが、理想的だろうけどさ。会場の入会以上に、そんなハードルの高い急所、見たいなとこ、どう付くつもりだ?」
「簡単さ。子供でも咄嗟に思いつくほどのな」
鼻で笑う輝美に、ますます怪訝な面持ちになる善悟。
「はあー。嫌な予感しかしねえわ」
ガックシと肩を落としながら、溜息を漏らす善悟。
そこで、輝美はとある目的地に着く。
「なあ、輝美。何で、砂川の区役所前で止まるんだ? お前はここで一体、何するつもりだ?」
背筋に突き刺さるほどの、嫌な予感に、従う様に、善悟は少しオドオドしていた。
「ほら善悟。これ着て行くぞ」
「え? 何で区役所の前で変装道具を使うんだ? それに何でお前の手に拡声器があるんだ? てっおい! 輝美⁉」
平然とした様子で善悟に指示を出す輝美。
善悟は意味不明な輝美の言動に、引っ張りまわされるかの様にして、仕方なく変装服に着替える。
黒いスーツから、チャイ色の革ジャンや黒いサングラスをかけ、青いジーンズに履き終え、車から下車する輝美と善悟。
すると、輝美が、後部座席から組み立て式の演説台を取り出すと、区役所の前で手際よく組み立てる。
だんだんと、輝美のする事が、想像できてしまった善悟は、気が気ではなかった。


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