クリーチャープレイバスケットボール 第二十六章 闇の究明に向け 五話

第二十六章 闇の究明に向け 五話

 「ま、待ってくれ! 俺は本当に何も知らないんだ! ただ知っている事があるとすれば、クリプバの運営員会会長、富芽銅羅って奴ぐらいだ! 俺がクリプバと連続殺人鬼や強姦に付いて知ってる事なんて、それぐらいだ! あんたを襲ったのも、クリプバの弊害になる人物は、速やかに抹殺しろとも言われている! あそこに俺が居たのも、役人の人間がクリプバの存在を露呈しないか、また、市の方にクリプバのトラブルを引き起こそうとする人間を抹殺する事が目的で居たんだ! 信じてくれ! 本当なんだ!」

 命がけの様に、必死に説明する人相の悪い男。

 それを見た輝美と善悟は、互いに顔を見合わせ、拳銃を懐にしまう。

 「なあ、こいつが区役所にいた理由って、お前ここまで読んでたのか?」

 「ある程度はな。クリプバが政府関係者にも知らされている事を憶測すると、区役所か市役所の人間も適応される。だが、厚生労働省や財務省の様な、機関に、こんなチンピラを配置するわけがないし、一般市民は干渉できない。一部の市民が、クリプバの闇らしき物を勘繰り、問い詰めきやすそうな場所は、自ずと区役所か市役所、交番になる。しかし、俺ら刑事(デカ)がクリプバに関与、出来ないうえ、今までそんな訪問者は警察のドアを叩いていない。となると絞られるのは区役所か市役所のみ。だから俺が敢えて囮となり、少しでも情報を握っていそうな三下をここまで誘き寄せた。てのが俺の計略だ」

 善悟が怪訝な面持ちで輝美にそう聞くと、輝美は、少し遠い目で語る。

 「なるほどな。にしても富芽銅羅って、確か網羅聖の会社の幹部の名前じゃなかったっけ?」

 納得したかと思いきや、思案する善悟。

 「ああ。それに網羅聖の業務内容は、株の売買だけでなく、全ての商品メーカーと締結し、スポンサーや、宣伝、商品の流通ルートを管理している、王手中の王手会社だ」

 「だよな。んで、その富芽銅羅、て奴は、今までの連続殺人や、強姦に関与してるって事で良いんだよな?」

 淀みなく喋る輝美の言葉に、怪訝な面持ちになる善悟。

 「こいつの言っている事が本当ならな。ただ、奴の年齢は四十は過ぎている。そんな年配の奴が、あれだけの事件を起こして、一切の証拠を残さず済ませる様な、芸当が出来るかは、疑問だがな」

 輝美も怪訝な面持ちになり、何かを思案しているような様子になると、善悟も顎を指先で摘まみながら、何かを憶測する。

 「……もしかしてだけどよ。銅羅って奴は、ペナルトギアを装着してるんじゃないか?」

 「……だとしたら、さっきよりは信憑性は出てくるな」

 「だろ」

 あまり浮かない様な表情で、推理する善悟の言葉に、先程よりは、表情が緩くなった輝美。

 善悟は、真剣な面持ちで答える。

 「なあ、あんたら、悪い事は言わねえ。ペナルトギアまで知っていたら、もうそこまでにしとけ。今、手を引けば、命は助かるかもしれないんだぞ」

 輝美と善悟の推理中に、黙って冷や汗を流し続けていた人相の悪い男が、おどおどしながらそう口にする。

 「何だお前。心配してくれてんのか? 意外といい奴じゃねえか」

 呑気にそう口にする善悟に、フルフルと首を横に振るう人相の悪い男。

 どうやら、恐怖と言うのは、人を善人に変える特効薬、見たいな物か? とクリプバと関係は無いが、そう、脳裏を過ってしまった輝美だった。

 「んで。どうやって銅羅を確保するよ?」

 「まずは奴の付近と関係者から当たるぞ。それからこいつは、銅羅を確保するまでここで監禁だ。このまま警察署に連れてっても、ろくな証拠も出ず、釈放されるのが目に見えている」

 「あいよ」

 二人は銅羅、確保のため動き出す。

 こうして、輝美と善悟は、クリプバの闇の一角に手を伸ばしたのだった。

パーソナルジム『豹と公園』

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