
第二十七章 第二回戦、開始 一話
月日は経ち、十一月七日の夜の六時三十分。
理亜たちは、クリプバの第二回戦に向け、クリプバの会場の控室で、緊張をほぐしていた。
「いやあー。二回戦かー。これに勝てば決勝。遅いようで、早く感じるねー」
「なに年寄り臭い事言ってんだよ。今からそんなホゲー、とした感じでいたら、二回戦、勝てないぞ」
智古が、呑気にお茶を飲みながら口にすると、奏根が、呆れて言う。
「えへへへ」と笑ってごまかす智古。
そこで、ある重大な事に、今更気付いた加奈が、理亜を見て口にした。
「そう言えば。理亜さん。あれから一度もエクストラロード、使ってないですけど、……まさか」
「えっ? どしたの?」
加奈が淡々と言いながら、自分で口にして、ある重大な事に気付いた事に、目を大く開きだす。
理亜はと言うと、スナック菓子を頬張りながら、キョトンとした面持ちで、加奈を見つめる。
加奈の言葉から、ある事に気付いた、豪真たちも、目を大きく開き、口をあんぐり開け、理亜を見る。
そんな理亜に注目が集まる中、沈黙を破ったのは、高貴だった。
「……あの、理亜さん。付かぬ事をお聞きしますが、エクストラロードは、今、使おうと思えば、使えますか?」
「ん?」
問題の核に触れる高貴のおどおどした質問に、はてな顔で首を傾げる理亜。
「何。エクストラロードって?」
真顔でそう答える理亜。
豪真たちは、ズルツとズッコケた。
「どうするよ監督。このダルダル女がこんなんで、大丈夫か?」
「ぐ、グルジー」
奏根は、深刻そうな表情で、理亜の首を両腕でスリーパーホールドを決め、理亜は、たまらず、どこから声を出してるか分からないぐらいの、悶絶とした声を上げていた。
「まあ、理亜に説明してなかったから仕方ないな。いいか理亜。エクストラロードと言うのは……」
真剣な表情で、豪真がエクストラロードについて説明すると、解放された理亜は、眉を顰める。
「……ペナルトギアが臨界点? オーバーロード?」
「駄目だこりゃ」
ペナルトギアの説明を受けた理亜は、思考を巡らせ、理解しようとするが、まるで珍紛漢紛と言った所だった。
奏根は、肩をガックシ落としながら、呆れていた。
「ねえ豪真さん。どうしたらエクストラロ―ドが使えるの?」
次が二回戦だと言う事もあり、少し慌て気味で、そう聞く理亜。
「すまないが、私にも、エクストラロードの使い方までは、浅はか並の知識しかない。ただ言えるのは、ある人が、感覚で掴み取れ、とも言ってたが」
困った表情で口にしていく豪真。
すると、理亜はどうしたらいいものか考え俯く。
「そっかあ。……ならいいや」
「「――えっ! いい⁉」」
何の変哲もない声音でそう言う理亜に対し、豪真たちは、一驚する。
「うん。だって、分からない事を考えて、グダグダ悩むより、私たちがチームとして頑張って、プレーする事が大事でしょ。私のエクストラロードが使えるかどうかなんて、二の次三の次だよ」
「おっしゃってる事は理解できますが……」
「でしょ。だら皆で掴み取ろ。勝利も、思いでも♪」
不安そうな声の高貴の言葉を払いのけるぐらい、理亜は暖かい笑みで答える。
すると、奏根が深い溜息を吐く。
「しゃあねえな。まあ、ふしだら女に全て任せてたら、後で痛い目に見るだけじゃすまなそうだし」
「照れてる?」
「誰がじゃボケーーー!」
「グエエッ!」
奏根は嫌々口にしていたのだが、理亜は天然だったのか、素の表情で、そう口にすると、頭にきた奏根は、再び、スリーパーホールドを、理亜に決める。
理亜は、野太い声音で呻き声を上げていた。
それを、暖かく見守っていた、智古、高貴、加奈、だったが、豪真だけが怪訝な面持ちで俯瞰していた。
本当に、エクストラロードなしで、勝てるのか? と。


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