クリーチャープレイバスケットボール 第二十七章 第二回戦、開始 五話

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第二十七章 第二回戦、開始 五話

 「やれやれ、まさか二回戦目が、こんな茶番だらけのメンバーとの対戦とな。我の偉業には、拍車はかけられない様よな」

 「あん?」

 その様子を観察していた、ダイオンジチームの最後のメンバー。ポジションスモールフォワード、背番号八番、身長、百五十六センチ、体重三十八キロの女の子。

 まるで着物が似合うような、可憐な容姿に、茶髪のミディアムヘアー。

 その(りょう)(りょ)()()と言う女の子は、奏根の威圧に怯むことなく、淡々と口にしていく。

 「ここはバスケだけが物を言う。たかが巨乳か貧乳程度で躍起になっている様では、スポーツマンではなく、ただ批難を口にするだけの、我らプレイヤーたちの厄介者。それを我たちから見れば、茶番以外何物でもない。違うかえ?」

 「ぐぬぬぬっ」

 少し毒舌気味の論破に、奏根は言葉が出てこず、怒りを押し殺すかの様な相好で、突っ立っている事しか出来なかった。

 「いやあ~、芙美ちゃんいると、楽で助かるじゃん」

 そう呑気に口にする静香。

 理亜たちは、先程から被弾されまくっている奏根に憐憫の眼差しを向ける事ぐらいしか出来なかった。

 「まあ何にせよだ。互いに腹を割った試合にしよう。ぬからないでくれよ」

 先程まで、大笑いしていた順子が、にこやかな顔で奏根に手を伸ばす。

 「……こっちのセリフだ。手何て抜くんじゃねえぞ」

 どこか恥ずかしそうでありながらも、鋭い眼力で、順子の手を握り返す奏根。

 すると、会場はヒートアップしたみたいな盛り上がり方を見せた。

 「さてと、全大会の準優勝と、どこまで渡り合えるか……見ものじゃないか」

 そう呟く様にねちっこい笑みで言うのは、観客に紛れ込んでいる由紀子だった。

 「選手の皆さん方はポジションに移動してください」

 若い男の審判がそう言うと、理亜たちはポジションに着いていく。

 「では、行ってきます」

 「ああ。気持ちで負けんなよ」

 高貴が、キリッとした目で理亜たちにそう言うと、奏根は高貴の背中を強く叩き、気合を注入する。

 「ねえ順ちゃん? この試合終わったらファミレス行こうよ」

 「いいなあ。ついでに祝賀会といくか」

 エノアが、おっとりとした声音でそう言うと、順子はにっこり笑いながら答える。

 「ハイ! ハイ! 私も行きたい!」

 そこで、事もあろう事か、何故か理亜が順子たちの会話に食いつく様にして挙手する。

 それを、奏根たちは唖然として見ていた。

 「止めんかふしだら女!」

 スパン!

 「あイタッ!」

 奏根はどこからかハリセンを取り出し、理亜の頭をシバク。

 「アハハハッ! 本当に面白いチームだなお前ら。でも良いのか? 私たちにとっての祝賀会なんだぜ?」

 少しポカンとしていた順子はタカが外れたみたいに哄笑すると、少し嫌味ったらしく口にする。

 「え? 私たち、勝つけど?」

 そこで、理亜はキョトンとした面持ちで素の言葉を口にすると、これまたポカンとした表情になる順子たち。

 「……そっか」

 順子は何か吹っ切れたかのような清々しい笑みで理亜に向け口にする。

 「なあ。こいつら最高のチームだぜ。テンション上がってきたわー!」

 理亜のすぐ隣にいる芙美に、満面の笑みでそう言う順子。

 「こら順子よ。試合前にキャプテンの闘志が燻るのは何事においても汚点になる。我らまでお前さんと情意投合させるでない」

 大きな溜息を吐いて少し順子の熱を覚めさせる芙美。

 その隣で理亜は、順子の言葉が嬉しかったのか、デレ笑いしていた。

 「あのう。……試合の方はよろしいでしょうか?」

 若い男の審判が申し訳なさそうにそう言うと、順子は「ああ、悪い悪い。始めてくれ」と豪快に笑いながら口にする。

 「オホン。では試合を始めます」

 審判の男がそう口にすると、一瞬にしてピりついた空気が理亜たちの背中を襲う。

ストレキール

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