
第二十七章 第二回戦、開始 六話
笛がなると同時にブザーもなり、センターサークルに居る審判の手に握られていたボールが宙を舞う。
そして、最高到達点に達した頃合いを見計らい、高貴と順子は高く飛ぶ。
そのボールを先に手にしたのは高貴だった。
「やべ! 熱くなりすぎて飛ぶタイミングが」
順子はと言うと、心の温度が熱くなりすぎて、飛ぶタイミングを誤ってしまった。
高貴はそのまま智古の居る右サイド目掛け弾こうとしたが、なんと、順子の手が迫っていた。
「なにっ! 着地して間髪入れずにジャンプして、高貴に追いついただと⁉」
豪真が、アッと驚く中、順子は笑みを浮かべながら高貴と空中でボールを奪い合う。
片手で押し続けていた中、そのボールを弾いたのは、順子だった。
順子が弾いたボールの先に居たのは、静香だった。
「えー。めんど」
そうぼやきながら順子が弾いたボールを手にした静香。
「行かせるか!」
奏根は切羽詰まった表情で静香の前でディフェンス体制に入る。
「はあー。こんな熱い奴とマッチアップだなんて、今日の私ついてないかも」
少し嫌々な感じで、そうぼやきながらドリブルする静香。
「でも、やるっきゃないか。私の楽な人生のためにも」
まるで、何かに腑に落ちた様で、落ちてない様な複雑な気持ちのまま、奏根を抜きにかかる静香。
バックチェンジで奏根に揺さぶりをかけながら、目線はそれとは逆方向に必ず向ける静香。
奏根は静香の身体全体を観察していたため、どちらから来るのか想像つかなかった。
すると、ダブルバックチェンジから右側からロールターンで抜いた静香。
目の向いている方向とは逆方向から向かってきたため、奏根も意表を突かれた。
そのまま、静香はリングに向かいドリブルしていく。
すぐに加奈がヘルプに入ろう、と静香の斜め前から向かって行く。
もちろん、エレアをフリーにしない様、慎重に、かつ積極的に。
だが、エレアと静香は加奈の考えを読んでいた。
静香とエレアを挟むようにディフェンスをしていた加奈を出し抜こうとするかのように、静香はスローインライン、エレアはサイドラインに向かい走り出す。
そこで、加奈は躊躇してしまう。
どっちを追えば良いのか? と。
そこで、静香は頃合いかと思い、スローインラインのスリーポイントラインの付近から、ボールを持ってジャンプした。
静香の後を追っていた奏根も迷わず飛ぶ。
加奈は、静香がシュートしてくると思い、急いでフリースローラインから跳躍する。


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