
第二十七章 第二回戦、開始 十話
エノアがゆっくりと、ドリブルして行くと、加奈がディフェンス体制に入る。
ゆっくりと近付いていくエノア。
すると、あと二歩程で、加奈に距離を詰めようとした時だった。
エノアはビハインドパスで右側に居る聖加にパスを出した。
早く出すパスに少し驚く加奈。
そこでエノアは加奈の前を走りすぎた。
すぐに聖加はワンハンドリターンパスで横に居るエノアにパスを出す。
パスを受け取ったエノアはフリースローサークルまでドリブルして行くと、高貴がヘルプに入る。
エノアはレッグスルーで右手に持っていたボールを左手に手にすると、何のフェイントもなく、両手でクイックフリースローシュートを打つ。
しかし、そのシュートは両手で強く押し出す様なシュートだったため、高貴はジャンプする暇もなく、そのボールは高貴の頭上を早く通り過ぎる。
「シュートじゃない!」
豪真が何かに気付き声を上げると、その声に応えるかの様に、ボールに追いついた加奈が跳躍する。
しかし、加奈の背後で黒い影が迫っていた。
その影は、片腕を広く伸ばし、リーチの長さで加奈が手にする寸前のボールを奪うと、そのままダンクで決めた。
コートに足を着ける頃には、加奈はそのダンクをした人物が、すぐに順子だと言う事が分かった。
「ピッ! プッシング! 白七番!」
「「えっ!」」
「バスケットカウントワンスロー!」
そこで、審判のお兄さんが笛を吹くと、理亜たちは一驚する。
そのままワンスローを高々と宣言する審判のお兄さん。
自分からぶつかってしまった事は加奈が一番よく知っている。
なので、加奈は慌てる事無く片腕を上げる。
「当たったなら仕方ないか」
息を切らしながら奏根がぼやく。
そのまま順子がフリースローを決め、これで点数は二対七。
負けはしているが、特にめげてない理亜たち。
「上手いねあの人たち。特に青の四番の人」
「ええ。ダイオンジチームのスコアラーでしょうか?」
「多分そうじゃない」
理亜と高貴が少し話をしていると、奏根が「そんな憶測している暇なんてないだろ。今は点を取りに行く事だけ考えろ」とぶっきらぼうに言う。
「そだね」
呑気にそう口にする理亜。
「加奈ちゃん、あまり気負わないでね」
「はい!」
智古が加奈にパスを出す際、気遣いの言葉をかけると、加奈はキリっとした目つきでパスを受け取る。 センターサークルにまでドリブルして進むと、エノアがディフェンスの構えを取っていた。


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