
第二十八章 激突、奏根と静香、互いに譲らぬ気持ち 五話
それを見た順子たちは静香に近付き、笑い合いながらハイタッチをしていく。
「ナイッシュー!」
「へへっ♪」
順子が力強く親指を立て、ウインクすると、ニンマリ笑いながらブイサインをする静香。
「今のはハーフラインからのシュートですので、五点とします!」
審判役のお兄さんが、そう言うと、会場の液晶パネルが、二十三対二十と言う数字になる。
「え! 一気に縮められた⁉」
理亜は、その事に一驚する。
「あんなのありですか?」
「まあ、クリプバのルール上、問題ないけど、まさか、あんなシュートを打つ人が居たなんて……」
後ろ姿を見せ、自分たちのコートに戻る、静香の背中を見つめながら、唖然と言った様子で口にする、加奈と智古。
その時、豪真はと言うと……。
フゥーフー! エンジョーーーー、ビタ!
またもや、訳も分からない、オペラ歌手の歌が、脳裏に過りながら、悦に浸るかのように、身体をのけぞり、目を瞑り、両手をのびのびと伸ばす。
「……敵みてあれやられると腹立つな」
奏根は、蟀谷に怒りマークを付けながら、ぼやく様に言う。
「さあ、ディフェンスだ! 気張れよ!」
「「おう!」」
順子がチームメイトを鼓舞すると、エノアたちは、声を揃えて声を上げる。
「取られたら取り返す! こっちもギア上げてくぞ!」
「「おう!」」
負けじと奏根も力む様に言うと、理亜たちも、その思いに答える。
そして、そこからは、点の取り合いになっていた。
奏根がサイクロンシュートで決めれば、すぐに静香が、例のシュートで点を取る。
フリースローから、またはスリーポイントラインやハーフラインから。
豪と柔の戦いは、拮抗していた。
そして、第二クォーターが終わる三分前、ダイオンジチ―ムがタイムアウトを取った。
「タイムアウト! ダイオンジチーム!」
審判のお兄さんが声を上げると、全員が動きを止め、各々のベンチに向かって行く。
順子たちはスポーツドリンクをがぶ飲みし、汗を拭いていく。
「皆さん、お疲れ様です」
「どうしたの監督? 私たち、順調じゃん?」
達樹が手を後ろに組みながら、微笑み、順子たちを出迎えると、静香は怪訝な面持ちで達樹にそう言う。
「そろそろ頃合いです。静香さん。お疲れ様でした」
「えっ! 何で⁉」
まさかの達樹の言葉に、静香は驚愕する。
「私はまだまだ行けるじゃん! シズコラシュートだってこれからが見せ場じゃん!」
静香が異議を申し立て、自分のシュートの有効性について、主張する。


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