クリーチャープレイバスケットボール 第二十八章 激突、奏根と静香、互いに譲らぬ気持ち 六話

第二十八章 激突、奏根と静香、互いに譲らぬ気持ち 六話

 が、しかし。

 芙美が無言で静香の右手首を掴み目線にまで上げ、鋭い目つきで凝視する。

 「イタっ!」

 手首を掴まれただけで、痛みを口にする静香。

 「痙攣が起き、指先が少し青みを帯びている。レイノー現象に近い状態じゃ」

 「う、ううぅ」

 馬鹿な子を持つ母親見たいな目で、静香にそう言う芙美。

 静香は言い返せなくなり、消沈してしまう。

 「静香さん。このまま続ければ、最悪な場合、壊死を引き起こす可能性が高いです。なので、ここまでです」

 達樹が冷静な声音でそう言うと、静香は「でも、でも……」と今にでも泣きじゃくりそうな面持ちになってしまう」

 「良いですか静香さん。貴方は次の試合を控えています。とは言っても、試合と言うのは、貴女の日常の一環です。ロジックや道徳などとは無関係と言ってもいい。そんな物のために、残りの人生を棒に振るなど誤った選択です。なので、五体満足でありながら、今とこれからを謳歌する。楽な人生こそ、貴女に取って最大の強みであり、長所です。私はそう信じています。ですからご自分をもっと大切になさってください」

 太陽のような暖かい笑みでそう口にする達樹に、静香は「監督……約束破ってごめんじゃん」と半ベソをかきながら達樹に向かい抱きしめる。

 達樹は愛おしい様に、静香の頭を優しくなでる。

 「よし! これで決まったな! んで、この後はどうするかだけだな」

 「それに付いては、私に策があります」

 順子が拳を片手の手の平で、パン! と叩くと、闘志を宿しながら、点数の表示パネルを見る。

 四十五対四十一

 理亜たちが今の所、勝っているが、気の抜けない点数。

 そこで、達樹が静香を慰め終えると、これまた穏やかな声音で、ある指示を提案する。

 「奏根さん。大丈夫ですか?」

 「はあーー、ふううぅぅーーー。ああ、大丈夫だ」

 高貴が気遣いの言葉をかけると、乱れた呼吸を整えるため、深く深呼吸をし気持ちと呼吸を落ち着かせた奏根は、何のブレもなく答える。

 「サイクロンシュートは消耗が激しいからな」

 豪真も憂慮する思いで、ぼやく様に言う。

 加奈たちも、心配した面持ちで奏根を見つめる。

 「みんな、心配しすぎだって。ゼルチャートンソンチームとの対戦の時は、大恥かいて迷惑かけた分、ここできっちり償うしさ。何より、あの時は不完全燃焼で終わったからな。こここらよ」

 奏根は心配かけまいと、元気はつらつな面持ちで、力こぶを見せつける。

 その様子を見て、少しは安堵したが、それでも心配する豪真たち。

 「そうだよ皆。ここで奏根ちゃんがガス欠したら、今まで私に対する暴力ぺちゃ、あ、いや、暴力の根源はここで途絶えるんだよ。まあ、私としてはその方が良いけど」

 そう力説しながら、危うく、暴力ペチャパイ女と言いかけた自分を慌てる事無く静止させると、あっけらかんとした笑みでそう言う理亜。

 「……だな。今後のお前のためにも! ここでガス欠するわけにはいかないよな。暴力のためにも……」

 鋭い目つきで、理亜に対し凄みを利かせる奏根。

 すると、理亜は「ふえーーん! ごめんなさーい! ガス欠だけせず私に対する暴力だけおなくなりになってー!」と奏根を拝むように泣いて懇願する。

 それを見た豪真たちは、腹を抱えて笑う。

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