
第二十九章 輪の力 二話
「まさか、サイクロンシュートが……破られた」
豪真は呆然と立ちつくし、まるで圧巻でも受けたかの様な衝撃が全身に走る。
「よっし!」
「やったね♪」
順子と聖加は嬉しさのあまり、ハイタッチをする。
「先程のブロックは、ボールを直接触っていないため、ダイオンジチームからのボールとなります!」
「「ええ!」」
審判役のお兄さんが力んでそう言うと、一驚する理亜たち。
「なるほど、先程のブロックは、あくまで、竜巻に対しての物で、ボールには一切触れていないと」
「あー。こりゃ完全に破られたね」
高貴が納得すると、隣にいた智古は、阻止された事を再実感する。
「何しけた面してんだ。ここからだぞ」
そこで、奏根は落ち込んでいる様子など微塵も感じさせない様に高貴たちに近付くと、平然として、智古と高貴の尻を軽く叩く。
高貴と智古は互いの顔を見合わせ、力強く頷く。
「今度はこっちが奪って、一本取っちゃいましょー」
「おう!」
加奈が意気軒高として奏根にそう言うと、奏根は気合十分と言った感じで答える。
「あいつらも、芯が強くなったな」
豪真は一ミリも落ち込んでいない奏根たちを見て、誇らしげに頬を緩ませる。
「ねえ、ねえ、奏根ちゃん。ブロックされてどうだった? やっぱり悔しい? 私みたいな人材が居てくれて、心から愛してるって言いたくなった?」
「……お前、この試合終わったら、ぜったい泣かすからな(怒)」
理亜が素っ頓狂な相好で悪意ゼロでそう言うと、奏根は蟀谷がぶちッとキレたかの様な反応で静かに理亜に向かって呟く。
そして、試合は再開し、ダイオンジチームからのスタートとなる。
静香が理亜たちのコートのスローインラインからエノアにパスを出すと、エノアはドリブルで理亜たちのコートに走り出す。
「行くよ! 加奈ちゃん!」
「はい!」
「「サイクロンストップ!」」
智古が加奈に呼びかけると、加奈も意気込んで答える。
そして、二人は、センターラインでサイクロンストップを発動した。
「うお! 何だこりゃ⁉」
順子が、目の前で竜巻が起きている現象に驚愕する。
他のメンバーたちもギョッとした面持ちになる。


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